安井算哲は算術にも興味があり、張り出された難題を解こうと時間を忘れて没頭します。ところが、時間切れでその場を一旦去り、忘れ物を取りに戻ると、関孝和（市川猿之助）が既にその問題を解いていました。そして新たな問題が掲載されていました。その問題を一生懸命解きます。そして自ら出題もします。
安井算哲は、会津藩主から全国を回って北極星の高さを観測する旅に出るように言われます。天文にも興味があった安井算哲は、苦労の末、１年半後に戻ります。旅の途中、歩きながら歩測して北極星の角度を予測するというシーンもありました。方位と距離でどれだけ南北にずれたかを予測していたのでしょう。江戸時代に測量して地図を作成した伊能忠敬を彷彿とさせてくれます。
最初に張り出された問題を解いているときに掃除をしている村瀬えん（宮崎あおい）と出会います。村瀬塾を訪れるとそこにえんがいました。お互い好意を持ち、１年後に旅から戻って再開する約束をします。ところが、予定が延びてえんは結婚してしまいました。
１年半後に戻り、藩主から暦の変更を検討するように言われます。しかし、暦を司るのは朝廷です。徳川家が口出しできるようなことではありません。算哲は、過去の暦の中で中国の元が作った暦が正確だということを民衆に知らせるため、朝廷が採用している暦と自分たちが提案している暦を比較して、街中でどちらの日食・月食の予測が正しいかを民衆の前でイベントとして実施します。そして、途中までは元の暦が正しい結果となるのですが、何度かあるうちの最後の予測は、朝廷の予測が当たってしまいます。
算哲は落ち込みますが、算術家の関孝和と会い、元の暦も間違っていることに気づかなかったのは浅はかだったと諭され、新たな暦の必要性を説かれます。ただ、関孝和は天文学者ではないため、その役目を算哲に託します。水戸光圀（中井貴一）らの推挙もあり、新たな暦を提案するに至ります。離縁したえんとも結婚し協力します。そして、朝廷が新たに選定した過去の暦と自分の提案した暦で勝負し、切腹覚悟で見事勝利します。
こういう硬派っぽい映画はあまり期待できないと思っていたのですが、しっかりエンターテインメントとして完成されていました。出演者のレベルの高さもあったかもしれません。
さらにプラスアルファとして知的好奇心も刺激してくれました。ただ、逆に現代では、こんなに純粋に知的好奇心を持つのはとても難しくなっているのではないかとも思いました。様々な情報が大量に簡単に入手できる環境で、江戸時代と同じように知的探求心を維持することはよほどのことかとも思うのです。でも、そんな中でも多くの研究がなされていることを考えれば、決してこの考えは正しくないのかもしれませんが。
ロケ地では、竹田城跡が映っていました。シーンとしては小田原城なので、背景には富士山が合成されていましたが。
DVDを見たのは2015年1月24日です。安井算哲を演じた岡田准一は、2014年のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』で主演の黒田官兵衛を演じていましたが、ひょっとしてこの『天地明察』を見て、抜擢されたんじゃないかと思いました。それだけ雰囲気や演じ方が似ていると感じました。名演だったと言えると思います。
安井算哲の心の支えともなった村瀬えんを演じた宮崎あおいも、2008年の大河ドラマ『篤姫』で篤姫を演じています。その雰囲気は、お墨付きとも言えます。
前半、日本中で観測するために北極出地隊の旅に同行する建部伝内役の笹野高史と伊藤重孝役の岸部一徳もいい味を出しています。３人が水戸黄門と助さん格さんに見えます。もっとも、算哲は３人の中では一番格下なんですが。そういえば、1978年に始まったTVドラマの西遊記で孫悟空（堺正章）のお供をする沙悟浄を演じていたと思いましたが、それは弟の岸部シローでしたね。
登場人物は、主人公の安井算哲こそマイナーかもしれませんが、そこに水戸光圀（中井貴一）や徳川家綱（染谷将太）が絡んできて、話のスケールも大きくそういう意味でも興味深かったです。
評価：７５点
【監督】滝田洋二郎（たきた ようじろう） （『おくりびと』なども監督しています）
【原作】冲方丁（うぶかた とう） 『天地明察』
【脚本】加藤正人（かとう まさと）、滝田洋二郎
【撮影】浜田毅（はまだ たけし） （『子ぎつねヘレン』などの撮影も担当しています）
【音楽】久石譲（ひさいし じょう） （『風立ちぬ』などの音楽も担当しています）
【ナレーション】真田広之（さなだ ひろゆき） （『ラスト サムライ』などにも出演しています）
【出演】
岡田准一（おかだ じゅんいち）（江戸時代の天文学者 安井算哲（のちに渋川春海と改名）役）、
宮崎あおい（村瀬えん役） （『劔岳 点の記』などにも出演しています）、
佐藤隆太（さとう りゅうた）（えんの兄 村瀬義益役） （『さよなら、クロ』などにも出演しています）、
市川猿之助（いちかわ えんのすけ）（関孝和役） （『ザ・マジックアワー』などにも出演しています）、
横山裕（よこやま ゆう）（算哲の碁友 本因坊道策役）、
笹野高史（ささの たかし）（北極出地隊の建部伝内役） （『釣りバカ日誌１２・史上最大の有給休暇』などの釣りバカ日誌シリーズではスーさんの専属運転手役として出演しています）、
岸部一徳（きしべ いっとく）（北極出地隊の伊藤重孝役） （『フラガール』などにも出演しています）、
渡辺大（わたなべ だい）（会津藩保科家の安藤有益役）、
白井晃（しらい あきら）（反対派の襲撃を受けて死亡する会津藩保科家の山崎闇斎役）、
市川染五郎（いちかわ そめごろう）（朝廷の宮栖川友麿役） （『蝉しぐれ』などにも出演しています）、
中井貴一（なかい きいち）（水戸光圀役） （『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』などにも出演しています）、
松本幸四郎（まつもと こうしろう）（会津藩主 保科正之役）、
きたろう（算哲の師 安井算知役）、
尾藤イサオ（びとう いさお）（道策の師 本因坊道悦役）、
徳井優（とくい ゆう）（北極出地隊の弥吉役） （『スウィングガールズ』などにも出演しています）、
武藤敬司（むとう けいじ）（北極出地隊の平助役）、
笠原秀幸（かさはら ひでゆき）（朝廷の土御門泰福役）、
小須田康人（こすだ やすと）（朝廷の大黒松太夫役）、
染谷将太（そめたに しょうた）（四代将軍徳川家綱役）、
矢島健一（やじま けんいち）（幕府の堀田正俊役） （『沈まぬ太陽』などにも出演しています）、
片岡弘鳳（幕府の酒井忠清役）、
浅見小四郎（あさみ こしろう）（幕府の稲葉正則役）、
青木健、
城戸裕次（きど ゆうじ）、
寿大聡（じゅだい さとし）、
掛田誠（かけた まこと）、
小柳友貴美（こやなぎ ゆきみ） （『早咲きの花』などにも出演しています）、
松本幸太郎、
松本錦弥、
松本錦一、
冲方丁
【上映時間】２時間２１分
【公開日】2012年9月15日
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