冒頭の「本能寺の変」のシーン。信長（篠井英介）の横顔は、肖像画にそっくりです。光秀（浅野和之）の「金柑頭」もかなりのデフォルメでいかにも光秀とわかります。歴史好きにはたまりません。笑えます。もっとも、私も歴史にそれほど詳しいわけではありませんが、多少の知識があれば、十分楽しめます。
本能寺の火が見える二条城のシーン。嫡男の信忠（中村勘九郎）は、光秀の軍が来る前に、松姫（剛力彩芽）とその子供、三法師（津島美羽）を玄以（でんでん）に預けて逃がします。こうして、織田家の嫡男は亡くなってしまいます。
光秀討伐の山崎の戦い。丹羽長秀（小日向文世）の軍は規模も小さく、秀吉（大泉洋）の到着を待っているのみです。光秀討伐の功績は秀吉のものとなり、秀吉の影響力が大きくなるのは必定です。丹羽長秀が柴田勝家（役所広司）と組んで、清須会議を開くことを画策します。表向きは、織田家からの招集です。丹羽長秀の鋭利な考え方が印象的でした。
そして、清須城のシーン。ここで映画の題名が映されます。秀吉が清須に入るシーンで遠景になだらかな山並が映されていました。清須から見えるのは、さしずめ、養老山地か、その北の、池田山あたり、または金華山などの美濃の山でしょうが、その山並は実際のものではなく、どこかもわからないものでした。
秀吉の名古屋弁も、一部、こんな名古屋弁あったかな？ と思うような言葉もありました。ただ、結構、名古屋弁を多用していました。名古屋出身の私はいいですが、名古屋以外の人たちは理解できない言葉もあるのではないかと思ってしまいます。たとえば、「わや」とか。
織田家の跡目として、勝家と長秀が信長の三男信孝（坂東巳之助）を担ぐことに対抗し、秀吉はうつけと評判の次男の信雄（のぶかつ）（妻夫木聡）を担ぐことにします。さらに、織田三十郎信包（のぶかね）（伊勢谷友介）も味方にしようとしますが、争いに興味のない様子の信包は一旦は断ります。
滝川一益（阿南健治）は、北条との戦いで、清須会議に向かうのが遅れます。山中で北条家家臣の更級六兵衛（西田敏行）と鉢合わせしますが、戦っている暇はないと言って、清須へ急ぎます。野原を駆け、その背後には雪を被った富士山が映ります。
松姫と寧（中谷美紀）の対面のシーンで後ろに掛かっている掛軸の絵はシャクナゲでしょうか。旗取り大会で、秀吉は信雄に見込みがないことをはっきり悟ります。その帰り道、寧と松姫と三法師が河原で遊んでいるのに出くわします。秀吉と黒田官兵衛（寺島進）は三法師が信長に似ていることに気づき、三法師を担ぐことにします。そして、長秀も味方につけ、会議が実施され、跡継ぎを三法師とすることになりました。秀吉は三法師を抱いてみんなの前に現れ、全員に頭を下げさせます。勝家もしぶしぶ頭を下げます。
秀吉と勝家が全面対決する賤ヶ岳の戦いは、翌年のことで映画では描かれていません。歴史を多少知っている人なら、知っているでしょう。逆に言えば、それだけ歴史に忠実に作ってあるのです。もっとも言葉は一般的な時代劇風の言葉ではなく、現代風ですが。時代劇風の言葉が当時、実際に話し言葉として使われていたかどうかもわからないですけどね。歴史をほとんど知らない人にとっては、どうなんでしょうか。太刀回りこそ少しだけあるものの、戦国の世でありながら、戦のシーンはありません。私でも多少の物足らなさを感じはしました。
ただ、実際の清洲会議は、勝家と秀吉の対立という構図ではなく、次男信雄と三男信孝の対立があったため、会議参加者の間では、三法師を擁立することは、事前に決めていたことが史料からわかっているそうです。
エンドロールはおいうえお順、明智光秀を演じた浅野和之から始まります。次いで前田利家を演じた浅野忠信と続きます。
三谷幸喜作品ということで、2016年のＮＨＫ大河ドラマ、『真田丸』にも出演している俳優が何人か出ています。大泉洋は、『真田丸』では、真田昌幸の嫡男、信幸を演じています。寺島進は、真田昌幸の忍びの頭領という役です。小日向文世は秀吉を演じています。『真田丸』と『清須会議』の役柄を比較するのも面白いかもしれません。
評価：７０点
【監督・脚本】三谷幸喜（みたに こうき） （『ザ・マジックアワー』などでも監督・脚本をしています）
【原作】三谷幸喜 『清須会議』（幻冬舎文庫）
【撮影】山本英夫（やまもと ひでお） （『ホワイトアウト WHITEOUT』などの撮影も担当しています）
【音楽】荻野清子（おぎの きよこ） （『ザ・マジックアワー』などの音楽も担当しています）
【美術】種田陽平、黒瀧きみえ
【製作】亀山千広（かめやま ちひろ）、市川南（いちかわ みなみ）
【出演】
大泉洋（おおいずみ よう）（羽柴秀吉役） （『釣りバカ日誌１７ あとは能登なれ ハマとなれ！』などにも出演しています）、
小日向文世（こひなた ふみよ）（丹羽長秀役） （『ＵＤＯＮ』などにも出演しています）、
役所広司（やくしょ こうじ）（柴田勝家役） （『劔岳 点の記』などにも出演しています）、
鈴木京香（すずき きょうか）（お市様役） （『沈まぬ太陽』などにも出演しています）、
佐藤浩市（池田恒興役） （『魔界転生』などにも出演しています）、
剛力彩芽（ごうりき あやめ）（松姫役）、
中谷美紀（なかたに みき）（寧役） （『壬生義士伝』などにも出演しています）、
坂東巳之助（ばんどう みのすけ）（織田信孝役）、
妻夫木聡（つまぶき さとし）（織田信雄役） （『６９ sixty nine シクスティナイン』などにも出演しています）、
伊勢谷友介（いせや ゆうすけ）（織田三十郎信包役） （『黄泉がえり』などにも出演しています）、
浅野忠信（前田利家役） （『茶の味』などにも出演しています）、
寺島進（てらじま すすむ）（黒田官兵衛役） （『蛇イチゴ』などにも出演しています）、
でんでん（前田玄以役） （『クライマーズ・ハイ』などにも出演しています）、
阿南健治（あなん けんじ）（滝川一益役）、
松山ケンイチ（堀秀政役） （『カイジ 人生逆転ゲーム』などにも出演しています）、
篠井英介（ささい えいすけ）（織田信長役）、
津島美羽（三法師役）、
浅野和之（明智光秀役）、
市川しんぺー（佐々成政役） （『世界の中心で、愛をさけぶ』などにも出演しています）、
西田敏行（更級六兵衛役）、
戸田恵子（なか役）、
中村勘九郎（織田信忠役）、
天海祐希（勝家の命により秀吉暗殺をしようとする枝毛役）、
梶原善（かじはら ぜん）（小一郎役）、
瀬戸カトリーヌ（小袖役）、
近藤芳正（義兵衛役）、
染谷将太（そめたに しょうた）（森蘭丸役）、
清末裕之（きよすえ ひろゆき）（金森長近役）、
久世浩（稲葉一鉄役）、
迫田孝也（さこだ たかや）（蜂屋頼隆役）、
ショー片島（弥助役）、
望月章男（長束正家役）、
松永一太（佐久間盛政役）
【声の出演】山寺宏一
【上映時間】２時間１８分
【製作】フジテレビ、東宝
【公開日】2013年11月9日
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