北関東新聞という群馬県の地方新聞社で遊軍記者を務めている悠木（ゆうき）（堤真一）は、社内の登山サークル「登ろう会」のメンバーでもあり、販売部の安西（高嶋政宏）と谷川岳衝立岩へ登攀に出かけようとしていた。ヘルメットをつけたキスリングを背負って会社を出ようとしていたとき、ジャンボ墜落の報が入ります。全権デスクを任された悠木は、佐山（堺雅人）らを現地に派遣したりと指示を飛ばします。しかし、上司との対立などがあり、なかなか満足のいく記事を載せることができません。何日目かに、圧力隔壁の破損が事故原因であるというスクープを載せる機会が訪れます。しかし、確実な裏をとったという自信がなければ記事にする決断はできません。そして記事の締め切りを無理に深夜ぎりぎりまで延ばし、佐山からの連絡を待ちます。そして連絡が入り決断します。
題名は「クライマーズ・ハイ」と、いかにもクライミングを扱っているような題名ですが、主題とはほとんど関係ありません。たまたま1985年8月12日、御巣鷹山（おすたかやま）で起こった日航機墜落事故の担当を任された記者がクライマーであり、本筋の進行と並行して、断続的にクライミングのシーンが挿入されているに過ぎません。
ただ、内容はとてもよくできていると思います。テンポよく展開し、ラストもかなりいいものがあります。いろいろな見方はできるでしょうが、努力に努力を重ねた末、あの結果となる、これが普通の人生なのだと、教えられたような気がします。
登攀は、谷川岳衝立岩です。１９８０年代後半だったと思いますが、山岳雑誌によく登場していました。そこを人工登攀で登ります。最後の方で、新たに追加したハーケンに手を精一杯伸ばしてアブミのカラビナをかけるシーンなど、結構リアルです。私自身は、いくつかの練習ゲレンデでアブミの練習をしたことがある程度ですが、アブミの架け替えに苦労した記憶が甦ってきました。
ただ、キスリングには違和感を覚えました。1985年、私は大学のワンダーフォーゲル部でキスリングを背負って鈴鹿山脈などへ出かけていました。でも、北アルプスへの夏合宿では横長のキスリングでは岩に引っ掛けて危ないからという理由で、縦長のアタックザックを使用しました。谷川岳でクライミングをするような人たちなら普通はアタックザックを使用していたのではないか、と思うのです。もっとも映画の演出として、一昔前の時代を描きたかったからあえてキスリングにしたのだろうとは思いますが。後年、安西の息子（小澤征悦）と登るシーンでは、アタックザックになっていました。
ラストにはニュージーランドのサザンアルプスが映ったシーンもありました。
評価：７９点
【監督】原田眞人 （『突入せよ！「あさま山荘」事件 THE CHOICE OF HERCULES』の監督でもあります。）
【原作】横山秀夫 『クライマーズ・ハイ』（文藝春秋刊） （『半落ち』の原作者でもあります。）
【脚本】加藤正人、成島出、原田眞人
【撮影】小林元（こばやし げん）
【音楽】村松崇継
【登攀指導】勝野惇司、遠藤晴行、小林政彦、福田かおり、森鐡彌、本郷博毅、佐藤達也
【出演】
堤真一（悠木和雅（遊軍記者・日航機事故担当全権デスク役）、
堺雅人（社会部・県警キャップ 佐山達哉役）、
山崎努（白河頼三北関東新聞社社長役）、
遠藤憲一（等々力庸平社会部長役）、
滝藤賢一（佐山とともに現場に行く地域報道班の神沢周作役）、
中村育二（粕谷隆明編集局長役）、
皆川猿時（伊東康男販売局長役）、
小澤征悦（安西耿一郎の息子 安西燐太郎（成長後）役）、
高嶋政宏（悠木と登攀に出かける予定だった販売部の安西耿一郎役）、
尾野真千子（スクープネタを得る地域報道班の玉置千鶴子役）、
螢雪次朗（追村穣編集局次長役）、
野波麻帆（元・社長秘書 黒田美波役）、
西田尚美（安西耿一郎の妻 安西小百合役）、
堀部圭亮（社会部デスク 田沢善吉役）、
マギー（整理部 吉井弁次郎役）、
田口トモロヲ（政経部デスク 岸円治役）、
でんでん（亀嶋正雄整理部長役）、
矢島健一（守屋政志政経部長役）
【上映時間】２時間２５分
【英題】CLIMBER'S HIGH
【初公開日】２００８年７月５日
【配給】東映、ギャガ・コミュニケーションズ
【公式サイト】http://www.so-net.ne.jp/movie/sonypictures/homevideo/climbershigh/
amazon.co.jp「クライマーズ・ハイ」（DVD・関連書籍等）
