蛇イチゴ あまり期待していなかったが、意外やかなりのいい出来でした。家族の姿がユーモアたっぷりに、しかししっかりと描かれているのです。ただし家族愛の素晴らしさを謳っているわけではなく、家族愛の難しさを語っていると言うのが妥当かもしれません。生々しい家族の姿が描かれています。一見現実的ではないような家族に見えて、妙に現実にありそうな感じだと思ってしまうのが恐いところです。
この映画を観ようと思ったのはその題名からです。ヘビイチゴと言えば、近所の低山で見かける花ですが、その花の名前を題名にしたのが気になっただけなのです。ですから、映画が始まってからもなぜ「蛇イチゴ」なのだろうか、と気にしながら観ていました。しかしなかなかそれに結びつくようなエピソードが出てこない。何かを象徴しているのだろうか、と思ったりもする。蛇と苺の組み合わせは考えてみれば面白い。蛇のようなもの苺のようなものが、何を意味しているのだろうか、などと。ところが、唐突にそのエピソードが出てきた。ヘビイチゴを探しに夜の山に入って行くシーンもある。そしてヘビイチゴの実物も極めて重要なシーンで出てきた。でも疑問は残る。なぜヘビイチゴだったのだろうか、と。やはり蛇のような毒々しいものと、苺のような甘いものの両方が、家族にはある、と言うことなのだろうか？ ちなみにヘビイチゴは花が黄色く、実は赤い。名の由来は、甘くなくまずいのでヘビが食べるようなイチゴだ、ということのようである。
終わり方も唐突である。この場合、それはプラスに作用しているように思う。そして、いろいろと考えさせられるのである。
主演はなんと「雨上がり決死隊」の宮迫博之。なんの違和感もなく主演をこなしているのは素晴らしい。第25回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞も受賞している。この映画の後、『下妻物語』でも好演している。
西川美和はこの映画が初監督・初脚本作品であり、２００３年日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を受賞している。
評価：７８点
【監督・脚本】西川美和
【プロデューサー】是枝裕和
【撮影】山本英夫
【音楽】中村俊
【美術】磯見俊裕
【出演】
宮迫博之（兄・明智周治役）、
つみきみほ（妹・小学校教師明智倫子役）、
平泉成（父・明智芳郎役）、
大谷直子（母・明智章子役）、
笑福亭松之助（祖父・明智京蔵役）、
手塚とおる（倫子の恋人で小学校教師の鎌田賢作役）、
絵沢萠子（喜美子役）、
寺島進（前田役）、
蛍原徹（通夜会場の男役）
【製作】「蛇イチゴ」 製作委員（バンダイビジュアル／エンジンフィルム／テレビマンユニオン／シィースタイル／IMAGICA）
【配給】ザナドゥー
【上映時間】１時間４８分
２００３年作品
【公式サイト】http://www.kore-eda.com/hebiichigo/DVDはこちらから購入できます
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