舞台は、北の島で、「麗端島」（れたんとう）となっていたと思いますが、映像は、礼文島です。そして、利尻島がところどころで映されます。秀麗な利尻山が聳える利尻島と海にへばりつくように存在する標高の低い礼文島。その対比はまるで光と陰です。社会のエリートたちが光なら、分校の教師と教え子は影の存在のようで、前半は、その陰の過去が語られていきます。映像としては絵になるようなシーンはほとんどなく、まるで本を読んでいるようです。
しかし、その陰ばかりかと思われる教え子たちや教師にも光が見えるのです。分校で小学生だった頃の苦い思い出が大人になっても忘れられない傷となっているのですが、実はそれだけが全てではなく、仲間同士で楽しかった思い出もあり、絆となって大人になった今でも存在しているのです。教師も、夫以外の男（仲村トオル）と会っていたことにより、夫を苦しめますが、夫はちゃんと理解していたり、男も救われたりします。ラストは、その光の部分が描かれています。利尻島も、そこにいては美しい島の全容を見ることができませんが、礼文島からならその美しい姿を見渡すことができるのです。光はあるのです。
映画の構成として気になった点としては、吉永小百合が持つ旅行かばんが軽すぎて風でふらふらと揺れたりしたり、一部シーンの雪がいかにも合成でリアルさがなかったりするシーンにはちょっと興ざめしてしまいます。ただ、撮影は、『劔岳 点の記』で、撮影だけでなく、監督もした木村大作です。冬の北海道での撮影で、かなりの部分でリアルさも感じました。でも、合成の雪は、『劔岳 点の記』でも使われていました。ちなみに、『劔岳 点の記』には、仲村トオル、宮崎あおい、松田龍平が出演していました。
森山未来の演技はなかなかです。東映創立60周年記念作品とのことで、主演が吉永小百合であることも納得です。吉永小百合は『北の零年』でも北海道を訪れています。北海道に縁があるようです。題名はいずれも、「北の」で始まります。『あぶない刑事』シリーズで共演した柴田恭兵と仲村トオルが一緒に出演しているシーンもありました。衣装協力には、「mont-bell」も参加しています。
本作品は、2012年の日本アカデミー賞にノミネートされ、音楽賞、撮影賞、照明賞を受賞しています。
評価：６９点
【監督】阪本順治（さかもと じゅんじ） （『亡国のイージス』なども監督しています）
【脚本】那須真知子（なす まちこ） （『北の零年』などの脚本も担当しています）
【原案】湊かなえ（みなと かなえ） 「二十年後の宿題」（『往復書簡』収録 幻冬舎文庫）
【撮影】木村大作（きむら だいさく）（『鉄道員 ぽっぽや』などの撮影も担当しています）
【音楽】川井郁子（かわい いくこ）
【劇中歌】「カリンカ」（ロシア民謡）、「この広い野原いっぱい」、「かなりや」、「クリスマス・イブ」、「夢の中へ」、「あの青い空のように」
【出演】
吉永小百合（川島はる役） （『青い山脈』などにも出演しています）、
柴田恭兵（川島行夫役） （『６９ sixty nine シクスティナイン』などにも出演しています）、
森山未來（はるの教え子で殺人事件の重要参考人 鈴木信人役） （『世界の中心で、愛をさけぶ』などにも出演しています）、
仲村トオル（警官 阿部英輔役）、
松田龍平（はるの教え子で警官になった松田勇役） （『昭和歌謡大全集』などにも出演しています）、
満島ひかり（みつしま ひかり）（はるの教え子でサロベツ湿原で巡視員をしている戸田真奈美役）、
勝地涼（かつぢ りょう）（はるの教え子で勤め先の会社が倒産した生島直樹役）、
宮崎あおい（はるの教え子で幼稚園で働いている安藤結花役）、
小池栄子（はるの教え子で溶接工をしている藤本七重役） （『下妻物語』などにも出演しています）、
里見浩太朗（はるの父 堀田久役）、
小笠原弘晃（小学生時代の鈴木信人役）、
渡辺真帆（小学生時代の戸田真奈美役）、
相良飛鷹（小学生時代の生島直樹役）、
飯田汐音（小学生時代の安藤結花役）、
佐藤純美音（小学生時代の藤本七重役）、
菊池銀河（小学生時代の松田勇役）、
石橋蓮司（奥村刑事役）、
高橋かおり（信人の婚約者役）、
駿河太郎（真奈美の夫役）、
福本清三（信人の祖父役）、
藤谷文子（結花の母役）、
伊藤洋三郎（勇の父役）、
塩見三省（図書館職員役）、
菅田俊（中田社長役）
【上映時間】２時間２分
【公開日】2012年11月3日
【製作】「北のカナリアたち」製作委員会 東映、テレビ朝日、木下グループ、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、加賀電子、朝日放送、セントラル・アーツ、メ?テレ、イノベーションデザイン、TOKYO FM、アマゾン ジャパン、北海道テレビ、朝日新聞社、読売新聞社、幻冬舎、日本出版販売、東映ビデオ、北海道新聞社、九州朝日放送、東日本放送、新潟テレビ21、静岡朝日テレビ、広島ホームテレビ、愛媛朝日テレビ、瀬戸内海放送
【配給】東映
http://www.kitanocanaria.jp/
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