ひみつの花園

 一風変わった性格の鈴木咲子(西田尚美)。お金を数えるのが好きだという理由で銀行員になります。そして銀行強盗に遭い、人質となって車のトランクに詰め込まれ、犯人と青木ヶ原樹海に行きます。しかし、車は崖から転がり落ち、犯人は死亡。咲子は5億円の入ったスーツケースとともに川を流れていきます。地下を流れ、地上に穴があいている場所でスーツケースは水の中に沈んでいきます。咲子はさらに流され、河原で発見されます。
 青木ヶ原樹海が空撮されるようなシーンがありましたが、これだけは青木ヶ原樹海ではなく、海外の風景でした。ロケに行ったのでもなく、手近なところで手に入れた映像を使ったようです。ひょっとしって中米のユカタン半島の映像でしょうか。ここには水中洞窟もあるといいます。

 この事件後、しばらく休養してから職場に復帰しますが、怠け癖がついて、やる気が出ません。テレビニュースで5億円は車の炎上とともに消失したと報道され、そのニュースを見て、本当は5億円がスーツケースとともに沈んでいることに気づきます。そして青木ヶ原樹海に家族と一緒に行きます。しかし、家族の協力はあまり得られず、一人で樹海に向かいます。しかし、クライミングなどの実力がなく、遭難し、鳴沢氷穴入口までたどり着いて、保護されます。

 しかしまだあきらめきれず、テレビで見た青木ヶ原樹海の定期的な自殺者一斉捜索をしていた多摩川大学地質学研究室の森田教授(内藤武敏)を探します。そのテレビでは、青木ヶ原樹海でコンパスが狂うというシーンもありました。私自身、青木ヶ原樹海を訪れ、コンパスを試したことがあります。確かに岩にコンパスを近づけると針がほぼ180°も回転する場所もありました。ただ、岩からコンパスを離し、普通に立った姿勢ではほとんど影響は受けませんでした。

 大学で教授と助手(利重剛)に会い、大学で勉強するよう勧められ、補欠合格し、授業を受けます。ホワイトボードには「測天量地」の文字。つまり測量の授業を受けたりします。目的地にたどり着くためにロッククライミングの練習もします。ちゃんとハーネスにカラビナやチョークバッグをぶらさげていました。浮き石をつかみ、宙吊りになるシーンも。そしてスキューバダイビングの練習も。しかし金槌なので、まずは水泳の練習をすることに。

 泳げるようになり、水泳からスキューバの練習をするようになりますが、水泳のレースへの出場を頼まれ、出場したら1万円あげると言われ、交渉の末、3万円で出場することになり、優勝したら30万円あげると言われ、猛練習して本当に優勝してしまいます。クライミングでは、コンペの賞金が125万円だと知り、これも優勝。インタビューで、原動力は、と聞かれ、「お金ほしいから」と。コンペは人工壁ではなく、自然の岩場でした。普通、クライミングコンペなんてTV中継されないと思いますが、映画の中ではTV中継があり、しかも、トップロープで速さを競うような感じの解説がありました。さらに、オーストラリアで、「エアーズロックを制した女」なんて記事にもなったりしてました。

 で、実際に計測機器などを持って、一人で目的地めざして出かけたところ、機器の故障などもあり、呆然となりますが、偶然、地下水脈を見つけ、穴からのぞくとスーツケースが沈んでいるのが目に入ります。それを手に入れ、ハッピーエンドかと思ったら、バミューダ海域での財宝のニュースに触れ、次の目標に向かうのでした。

 エンドクレジットでは、「池袋 秀山荘」の文字がありました。クライミングギアなどを提供したのでしょう。

 1997年公開の映画ですが、私が観たのは2008年。レンタルDVDで観ました。『OUT』(2002年)や『木曜組曲』(2001年)にも出演していた西田尚美がとても若く、痩せているのを見て、最初は、誰かすぐには気づきませんでした。そしてこの映画は、まさに西田尚美の映画。彼女の魅力満載でした。あまりヒットしたような話は聞かないのですが、そこそこ楽しめました。ただ、ラストの終わり方が弱いのが欠点かもしれません。

 矢口史靖監督は、1967年生まれ。私と同じ年の生まれです。1990年に『雨女』という8ミリ映画でぴあフィルムフェスティバルのグランプリを受賞し、1993年に、16ミリの『裸足のピクニック』で劇場監督デビューをしています。いずれも題名だけ見ると、アウトドア系を感じます。本作『ひみつの花園』後、『ウォーターボーイズ』(2001年)や、『スウィングガールズ』(2004年)を大ヒットさせています。また、脚本の鈴木卓爾は私と誕生日がほんの2日違いみたいです。ラストに流れる主題歌が年代的に馴染みのある「春咲小紅」なのは単なる偶然でしょうか。

評価:68点

【監督】矢口史靖(やぐち しのぶ)
【脚本】矢口史靖、鈴木卓爾(すずき たくじ)
【撮影】岸本正広
【音楽】矢倉邦晃
【主題歌】「春咲小紅」 歌:モダンチョキチョキズ、作詞:糸井重里、作曲:矢野顕子、編曲:半野喜弘
【出演】
 西田尚美(鈴木咲子役)、
 利重剛(りじゅう ごう)(多摩川大学地質学研究室助手 江戸川役) 『蝉しぐれ』などにも出演しています)
 加藤貴子(伊丹弥生役)、
 田中規子(鈴木美香役)、
 鶴田忍(鈴木幹男役) 『釣りバカ日誌14 お遍路大パニック!』などにも出演しています)
 角替和枝(つのがえ かずえ)(鈴木富子役) 『折り梅』などにも出演しています)
 内藤武敏(多摩川大学地質学研究室 森田清太郎教授役) 『砂の器』などにも出演しています)
 伊集院光(はねられる田中教官役) 『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』などにも出演しています)
 田中要次(クライミングを教える岩田役) 『キル・ビル』などにも出演しています)
 徳井優(椿銀行支店長役) 『スウィングガールズ』などにも出演しています)
 濱田マリ(図書館受付嬢役)、
 西牟田恵(にしむた めぐみ)(チェリー役)、
 相川直(ローズ役)、
 松岡俊介(ヤンキー役)、
 黒沢吉野(少女時代の咲子役)、
 木村多江(泳子役)、
 山梨ハナ(大家役)、
 山崎祥(水泳小僧役)、
 鈴木卓爾(道を訊ねる男役)、
 寺十吾(充役) 他

【上映時間】1時間23分
【製作】東宝、ぴあ
【配給】東宝
【公開】1997年

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