舞台は東京、秋田、山梨の塩山、山陰、伊勢、石川とあちこちのシーンがあります。残念ながら秋田のシーンでは山らしい山は映っていませんでした。
国土地理院の地形図「松江」などを広げて「亀嵩（かめだけ）」という地名を見つけるシーンがありました。
山陰本線を走る気動車の特急「まつかぜ」の先頭車両キハ８２と伯耆大山が格好良く映されていました。今西栄太郎刑事（丹波哲郎）が鳥取で駅弁を買った後のシーンで、バックに大山が見えたから米子あたりでしょうか。
私も中学１年の頃、友人と鳥取まで行ったときに乗って食堂車で昼食をとった記憶があります。キハ８２系よりキハ１８１系の方が格好良くて、ちょっと残念に思っていたと思います。
映画では宍道（しんじ）まで行き、木次（きすき）線備後落合行きの気動車に乗り換えます。奥出雲の出雲三成（いずもみなり）駅で降り、警察で話を聞いてから警察のジープで亀嵩駅を通る。ただこの亀嵩駅は、実際には二つ隣の八川駅でロケをしたそうです。亀嵩駅のホームに立つシーンもありました。このシーンは出雲八代駅だそうです。
亀嵩は算盤の生産で有名だそうで映画の中でも桐原小十郎（笠智衆）が算盤業を営んでいるという設定でした。地図を見ると、亀嵩の周辺には三郡山(806m)や玉峰山(820m)があり、鳥取県との県境には船通山(1142m)があります。
主人公の今西栄太郎刑事の名は、登山家の今西錦司氏と西堀栄三郎氏を合わせたような感じがするのは気のせいでしょうか。
亀嵩の言葉が東北弁に似ているという設定ですが、映画の中ではあまり東北弁に聞こえなかったのが残念です。
監督は野村芳太郎。本作の後、『八甲田山』や『八つ墓村』を監督しています。私が中学生の頃、名古屋の映画館で観たのでは、『配達されない三通の手紙』と『真夜中の招待状』の二本立てがありました。
脚本を山田洋次とともに担当した橋本忍は、『羅生門』で黒澤明とともに脚本を担当しています。また、『八甲田山』、『八つ墓村』の脚本も担当しています。
撮影の川又昂は、『八つ墓村』、『配達されない三通の手紙』、『真夜中の招待状』などを手がけています。音楽監督の芥川也寸志は、芥川龍之介の三男だそうで、『八甲田山』、『八つ墓村』、『配達されない三通の手紙』などを手がけています。
残念なのは、ラストの主題曲。映像のバックには合っていたと言えるかもしれませんが、１つの楽曲としてはちょっと品がありません。題名の「宿命」というのもストレート過ぎました。
評価：７２点
【監督】野村芳太郎
【脚本】橋本忍、山田洋次
【原作】松本清張
【製作】橋本忍、佐藤正之、三嶋与四治
【撮影】川又昂（かわまた たかし）
【音楽監督】芥川也寸志
演奏：東京交響楽団
作曲・ピアノ演奏：菅野光亮（かんの みつあき）
指揮：熊谷弘
【出演】
丹波哲郎（今西栄太郎刑事役）、
加藤剛（かとう ごう）（人気音楽家 和賀英良（わがえいりょう）役）、
加藤嘉（かとう よし）（本浦千代吉役）、
森田健作（西蒲田署若手刑事 吉村弘役）、
島田陽子（和賀英良の情婦 高木理恵子役）、
山口果林（田所重喜の令嬢で和賀英良の婚約者 佐知子役）、
春田和秀（千代吉の息子 本浦秀夫役（子役））、
緒形拳（殺害された三木謙一元警察官役）、
笠智衆（亀嵩で算盤業を営む 桐原小十郎役）、
松山省二（三木影吉役）、
佐分利信（前大蔵大臣 田所重喜役）、
渥美清（映画館ひかり座の支配人役）、
内藤武敏（捜査一課長役）、
春川ますみ（伊勢の扇屋旅館の女中澄江役）、
稲葉義男（捜査一係長役）、
花沢徳衛（昔の三木の同僚安本役）、
信欣三（国語研究所所員桑原役）、
松本克平（三森署署長役）、
浜村純（巡査役）、
穂積隆信（新聞記者松崎役）、
山谷初男（岩城署署長役）、
菅井きん（山下・お妙役）、
野村昭子（若葉荘の小母さん役）、
今井和子（亀嵩の三木の妻役）、
猪俣光世（バー・ロンの女給役）、
高瀬ゆり（バー・ロンの女給役）、
森三平太（岩城署刑事役）、
瀬良明（伊勢の扇屋旅館の主人役）、
久保晶（世田谷の巡査役）、
松田明（浪花区役所係員役）、
西島悌四郎（西蒲田署署長役）、
土田桂司（西蒲田署刑事課長役）、
丹古母鬼馬二（西蒲田署刑事役）、
高橋寛（西蒲田署刑事役）、
山崎満（西蒲田署刑事役）、
浦信太郎（西蒲田署刑事役）、
菊地勇一（和賀の友人役）、
今井健太郎（警視庁刑事役）、
山本幸栄（警視庁刑事役）、
小森英明（警視庁刑事役）、
水木涼子（亀嵩の農家の主婦役）、
戸川美子（慈光園の係員役）、
夏純子
【製作】松竹、橋本プロダクション（提携第１回作品）
【上映時間】２時間２３分
１９７４年作品
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