大学を中退した若い男性生島与一（大西滝次郎）が、共同トイレしかない安アパートで、串焼きの串刺しをしながら生活します。そこはそれまでの生活とはまるで違う世界です。そのアパートには、綾という女性（寺島しのぶ）もいます。
終盤で、綾と生島が題名のように、心中するために近鉄で赤目口に向かいます。ここからまた赤目四十八滝のシーンとなります。不動滝、布曳滝、千手滝、琵琶滝などが映されます。
娯楽性もありますが、芸術性も兼ね備えた映画と感じました。２時間３９分と長めですが、あまり退屈だとは感じませんでした。
原作の車谷長吉は、本作品で直木賞を受賞しています。車谷長吉の名前を目にしたのは朝日新聞の「悩みのるつぼ」という相談コーナーが最初です。女子高生に対して欲望を抑えきれないほどだ、という高校教師の相談に対して、できてしまえ、という回答をするのです。人生が破綻すれば、そこから何かが見えてくる、というのです。こんな回答をする車谷長吉とはどんな人なのだろうと思っていましたが、『赤目四十八瀧心中未遂』の原作者だと気づいたのは、この映画を観た後のことでした。
赤目四十八滝へは以前に一度出かけたことがあります。四十八も滝があるのか、すごいなあ、という予想は裏切られます。滝というよりは段差と言ってもいいほどの小ぶりな滝が連続して出てくるだけでした。これじゃあ心中もできないわけです。大滝が連続する場所なら、大台ヶ原から流れる大杉谷でしょう。ここは圧巻でした。
評価：７４点
【監督】荒戸源次郎（あらと げんじろう）
【脚本】鈴木棟也
【原作】車谷長吉（くるまたに ちょうきつ） 『赤目四十八瀧心中未遂』（文藝春秋刊）
【撮影】笠松則通 『さよなら、クロ』などの撮影も担当しています。
【音楽】千野秀一
【出演】
大西滝次郎（大学中退の生島与一役）、
寺島しのぶ（てらじま しのぶ）（綾役）（『ヴァイブレータ VIBRATOR』などにも出演しています）、
大楠道代（串やの岸田勢子役）、
内田裕也（彫眉役）、
新井浩文（肉運びの犀役）（『劔岳 点の記』などにも出演しています）、
大楽源太（綾の兄 真田役）、
大森南朋（おおもり なお）（業役）（『ミッドナイト イーグル』などにも出演しています）、
榎田貴斗（晋平役）、
大村琉珀（眠り猫役）、
沖山秀子（辻姫役）、
内田春菊（娼婦役）、
絵沢萠子（売女役）（『蛇イチゴ』などにも出演しています）、
牧口元美（父巡礼役）、
上杉幸子（母巡礼役）、
森下能幸（爺公役）（『バーバー吉野』などにも出演しています）、
金子清文（山根役）、
秋山道男（出痔亀役）、
赤井英和（新世界役）、
麿赤兒（まろ あかじ）（蝦の頭役）（『キル・ビル』などにも出演しています）、
渡辺謙作（三白眼役）
【上映時間】２時間３９分
【企画】赤目製作所
【初公開日】2003.10.25
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