その後、雪山のシーン。一瞬、槍ヶ岳っぽいピークも映っていましたが、北アルプスの穂高岳付近からの空撮のようです。雪山を歩くシーンは西穂独標へ向かう稜線でしょう。ピラミッドピークも映っています。西崎がテントで泊まっていると、夜空に光る飛行物体。そしてそれを追うスクランブル発進のＦ−１５を２機目撃します。
帰宅後、高校山岳部の後輩である東洋新聞松本支局に勤務する落合信一郎記者（玉木宏）に電話を入れると、自衛隊の演習機とのこと。トラブルが発生したが無事基地に戻ったという情報が入っているのだという。
西崎の義理の妹で西崎の息子を預かっている週刊「ＷＩＳＥ」記者の有沢慶子（竹内結子）が雪の舞う「穂高駅」にいるシーンもあります。その近くの道路を自衛隊のトラックがたくさん通るのを目撃します。
落合が西崎を取材に誘います。政府の対策会議で、墜落地点の説明では、「見岳沢」という名前になっていました。「岳沢」をもじったのでしょうか。近くには、「下平」、「風紋岳」、「元根峠」、「岩切尾根」、「白矢岳」、「八郎尾根」、「鐙沢」、「鹿ノ沢林道」と言う名称も出てきます。元ネタを想像したくなってしまいます。スタッフも楽しみながら名前をつけたのかもしれません。それとも原作にある名称なのでしょうか。
入山規制のかかる登山口からの入山をあきらめ、二人は「滝沢口」から入山します。一週間は天候が悪く、ヘリは飛べないという設定です。ザックからはロールマット「RIDGEREST」？やザイル、ワカンが見えます。ザックの後ろには、シャルレのアイスバイル「クォーク」も見えます。そして氷瀑を登って近道をしたりします。白装束の自衛隊員を見て、普通でないことも悟ります。
テントでビヴァークしているときに銃で撃たれたり、翌日歩行中に銃で攻撃され、雪崩に巻き込まれたりもします。攻撃されても、少し逃げただけで、相手は追ってもこないし、バトルもありません。ちょっと退屈です。北アルプスの設定ですが、八ヶ岳の大同心、小同心らしき映像もありました。
映像の撃ち合いのシーンは見ていても緊迫感はないのですが、無線を傍受した音を有沢慶子に聞かせるシーンでは、かなりの緊迫感があります。映像よりも銃声だけの想像の方が緊迫感があるのは皮肉でもあると感じてしまいました。
画面は雪山と東京で、頻繁に切り替わります。山で現場に向かう西崎らと、東京で工作員と接触する有沢慶子ら。途中までは淡々とストーリーが進んでいくだけで、見応えはそれほどありません。
ただ、終盤近くになるにつれ、この映画の良さが出てきます。意外にも涙なしには観られなくなってきます。そしてラストもなかなかの終わり方です。この映画は日本映画ながら日米同時公開されたそうです。しかし、いかにも日本人好みのラストだろうと思います。はたしてアメリカでは受け入れられたのでしょうか。米軍の立場もかなり微妙な描き方をしています。まあ、外国での評判などはどうでもいいのかもしれません。ラストの盛り上がりで、かろうじていい作品に仕上がったと評価できます。
エンドクレジットの背景も雪の北アルプスの空撮映像を堪能できます。奥穂高岳をメインに、ジャンダルムや槍ヶ岳など、そして雪の笠ヶ岳だと思われる映像も見られます。焼岳、乗鞍岳、御嶽も映っていたと思います。
小西浩文氏が山岳アドバイザーとして参加しているためか、装備などに違和感はありません。
評価：７１点
【監督】成島出（なるしま いずる） 『クライマーズ・ハイ』などでは脚本を担当しています。
【脚本】長谷川康夫、飯田健三郎 二人とも『ホワイトアウト』などの脚本も担当しています。
【原作】高嶋哲夫（文藝春秋刊)
【撮影】山本英夫 『蛇イチゴ』などの撮影も担当しています。
【音楽】小林武史
【主題歌】「はるまついぶき」Bank Band 作詞：櫻井和寿、作曲：小林武史
【山岳アドバイザー】小西浩文
【出演】
大沢たかお（戦場カメラマン 西崎優二役）（『子ぎつねヘレン』などにも出演しています）、
竹内結子（優二の義理の妹で週刊「ＷＩＳＥ」記者・有沢慶子役）（『黄泉がえり』などにも出演しています）、
玉木宏（東洋新聞松本支局に勤務する記者・落合信一郎役）（2006年放映のNHK総合『氷壁』では主役を演じていました）、
吉田栄作（自衛隊三等陸佐 佐伯昭彦役）、
藤竜也（内閣総理大臣 渡良瀬隆文役）（『海猿 ウミザル』などにも出演しています）、
石黒賢（週刊「ＷＩＳＥ」編集長 宮田忠夫役）（『ホワイトアウト』などにも出演しています）、
袴田吉彦（内閣危機管理監 冬木利光役）（『ガメラ 大怪獣空中決戦』などにも出演しています）、
坂本爽（さかもと そう）（週刊「ＷＩＳＥ」カメラマン 青木誠役）、
金子さやか（東洋人女性チヘ役）、
波岡一喜（工作員 平田俊夫役）、
佐原弘起（さはら こうき）（優二の息子 西崎優役）、
大森南朋（おおもり なお）（ヘリで現地へ向かう三等陸佐 斉藤健介役）（『ヴァイブレータ』などにも出演しています）、
佐々木勝彦（自衛隊統幕長役）、
濱田岳（西崎との無線交信相手の青年 朝倉役）、
浜田晃（陸幕長役）、
重松収（東京の町医者役）（『突入せよ！「あさま山荘」事件』などにも出演しています）、
橋爪淳（官房副長官 片山晋作役）、
立花一男（海幕長役）、
秋間登（空幕長役）、
相築あきこ（優二の妻で慶子の姉 西崎志津子役）
【上映時間】２時間１１分
【英題】MIDNIGHT EAGLE
【製作】ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン、松竹、ジェネオン エンタテインメント、テレビ朝日、
朝日放送、メ〜テレ、北海道テレビ、新潟テレビ、新潟テレビ21、九州朝日放送、IMAGICA、USEN、デスティニー
【特別協力】防衛省、陸上自衛隊、航空自衛隊、航空総隊
【商品協力】mont-bell、ICI石井スポーツ、MITSUBISHI MOTORS、東京マルイ
【撮影協力】津南町商工観光班、上村建設工業、津南町農業協同組合、マウンテンパーク津南、
ニュー・グリーンピア津南、栄村トマトの国、南魚沼市商工観光課、六日町八海山スキー場、
中越森林管理署、松本市観光商工部、松本信用金庫、城西医療財団、安曇野市商工観光課、
安曇野市教育委員会、東日本旅客鉄道長野支社、長野県大町建設事務所、長野県安曇野建設事務所、
大町市観光課、中信森林管理署、穂高郵便局、西友穂高店、明科第一交通、追分クリニック、イリク総業、
錦屋旅館、富田屋旅館、旅館雪国、ほりでーゆ〜、西穂山荘、赤岳鉱泉、新穂高ロープウェイ、Air Wing、
中央アルプス観光、ホテル千畳敷、高萩市、妙智會、成田国際空港、AP&PP、つくばフィルムコミッション、
つくば国際会議場、東急ステーションリテールサービス、HOTEL SKYLOVE、衆議院憲政記念館
【山岳用品協力】ハミックス、ALTERIA CO.,LTD.、MILLET、Caravan、EPIgas、karrimor、kem、
エキスパート・オブ・ジャパン、VICTORINOX、モチヅキ
【配給】松竹
【初公開日】2007.11.23
amazon.co.jp「ミッドナイト イーグル」（原作本・DVD等）
