映画ではトリスタンの一生が描かれていますが、彼のような人生にはとても共感を覚えてしまいます。そして最後も、映画のナレーションのように、とても良い死に方だと思えます。
長男と次男との対比が、白人とインディアンとの対比と重なって描かれてもいます。トリスタンはインディアンの価値観に共感し、深い理解を示します。エドワード・ズウィックという監督は、『ラスト サムライ』では日本人を描き、本作品ではインディアンの価値観を描いています。きっと共感するものがあるのでしょう。だから、日本人の私も共感できるのかもしれません。
背景に何度も映される雪を抱いた山脈はロッキー山脈でしょう。ロケの多くはカナダで行われたようです。灰色熊（グリズリー）との格闘シーンも見どころの一つでしょう。
花の名前を言うシーンではちょっと気になるセリフがありました。モンタナの実家に帰ってきた三男のサミュエル（ヘンリー・トーマス）が、婚約者のスザンナ（ジュリア・オーモンド）に向かって、花瓶に活けられた花を指して、「野スミレ、天使の花」（字幕）と言っていました。英語のセリフでは「アンジェリカ」が聞き取れました。"Angelica arguta"と言っていたような気がします。アンジェリカとはセリ科シシウド属の花のことです。スザンナが「どれがアンジェリカ（天使の花）？」と聞くと、サミュエルは５弁の花をちぎって渡していました。明らかにセリ科の花ではないでしょう？？？
こんなナレーションもありました。「彼女は岩の裂け目で凍る水 凍ると岩が割れる 水に罪がないように彼女にだって罪はないのだ」スザンナが婚約者のサミュエルを第一次世界大戦で失ったことを指しています。インディアンの自然観察眼を織り交ぜたナレーションでしょう。冬場や春先に岩壁の下を通る林道に落石がたくさん転がっているのはよく見かける現象です。
劇場公開時の邦題は、『レジェンド・オブ・フォール 果てしなき想い』でしたが、DVDでは、『レジェンド・オブ・フォール』のみになっています。
原題は、"LEGENDS OF THE FALL" で、THE FALL は、「秋」ではなく、アダムとイブの原罪（人間の堕落）のことを指しているようです。
撮影を担当したジョン・トールは１９９４年アカデミー賞撮影賞を受賞しています。ただ、撮影賞だけとはちょっと寂しい気持ちもします。この年の作品賞を受賞したのは、『フォレスト・ガンプ 一期一会』で、ノミネート作品には、『ショーシャンクの空に』もありました。確かに競合作品と言えそうです。ただ、作品賞にノミネートもされなかったのは、やはり白人社会の一般的価値観が邪魔をしたのではないか、なんて考えてしまいます。
ブラッド・ピットは、『セブン・イヤーズ・イン･チベット』、『リバー・ランズ・スルー・イット』、『ファイト・クラブ』などにも出演しています。本作品では、やはりアカデミー賞にノミネートすらされていません。
評価：７６点
【監督】Edward Zwick エドワード・ズウィック
【脚本】Susan Shilliday スーザン・シリディ、Bill Wittliff ビル・ウィットリフ
【原作】Jim Harrison ジム・ハリソン
【撮影】John Toll ジョン・トール
『ラスト サムライ』などの撮影も担当しています。
【音楽】James Horner ジェームズ・ホーナー
『タイタニック』などの音楽も担当しています。
【出演】
Brad Pitt ブラッド・ピット（次男 Tristan Ludlow トリスタン・ラドロー役）、
Anthony Hopkins アンソニー・ホプキンス（父親 ウィリアム・ラドロー大佐役）、
Aidan Quinn エイダン・クイン（長男 アルフレッド・ラドロー役）、
Julia Ormond ジュリア・オーモンド（スザンナ・フィンキャノン嬢役）、
Henry Thomas ヘンリー・トーマス（三男 サミュエル・ラドロー役）、
Karina Lombard カリーナ・ロンバード（混血のイザベル・ツー役）、
Gordon Tootoosis ゴードン・トゥートゥーシス（インディアンのワン・スタッブ役）、
Paul Desmond ポール・デスモンド（使用人のデッカー役）、
Tantoo Cardinal タントゥー・カーディナル（使用人のペット役）、
Christina Pickles クリスティナ・ピックルズ（母親 イザベル・ラドロー役）
【製作国】アメリカ
【製作】TRISTAR PICTURES
【上映時間】２時間１２分
【原題】LEGENDS OF THE FALL
１９９４年作品
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