子供の頃、父（伊武雅刀）に連れられて鱒を釣ったという山梨の「蓮実渓谷」（蓮美渓谷とも書かれていました）に、久しぶりに帰郷した兄と、地元で働いている弟と幼馴染の女性の三人で出かけます。そして、女性が吊橋から転落して死亡します。女性は誤って落ちてしまったのか、それとも突き落とされたのか。知るのは兄弟のみ。
真実は「藪の中」（『羅生門』を想像しました）のままですが、兄と弟の心は「ゆれ」ます。その「ゆれ」を裁判の中で描いています。裁判物の映画は掃いて捨てるほどあります。その裁判を使っているので、ちょっと食傷気味ではあります。でも、兄弟の心の「ゆれ」はしっかり描かれていると思います。この兄弟間の微妙な関係は、『蛇イチゴ』で家族を描いたときと同様、強烈な印象を残してくれます。
主演はオダギリジョー。『蛇イチゴ』のときの宮迫博之とは違って、実力派の俳優です。そのオダギリジョーを想像通りのキャラクターのままで使っています。無難な役柄でしょうけど、物足りないと思ってしまいます。それは弟役の香川照之にしても同様です。ただ木村祐一の検察官役ははまっていました。
ガソリンスタンドなどのシーンは山梨県富士吉田市でのロケだそうですが、重要な場面となる吊橋のロケ地は、映画の中の設定の山梨県ではなく、新潟県津南町。秋山郷の結東（けっとう）集落と見倉（みくら）集落の間で、中津川に架かる見倉橋という吊り橋が使われたそうです。見倉側には金城山(1360m)、結東側には長野県に高倉山(1326m)があります。金城山からの尾根は苗場山(2145m)に続き、高倉山からの尾根は鳥甲山(2038m)に続いています。そんなところにある吊橋ですから何の違和感もありません。最高のロケーションと言えるでしょう。
評価：７０点
【監督・脚本・原案】西川美和
【企画】是枝裕和、安田匡裕
【撮影】高瀬比呂志
【音楽】カリフラワーズ
【主題歌】カリフラワーズ 『うちに帰ろう』
【出演】
オダギリジョー（早川猛役）、
香川照之（猛の兄 早川稔役）、
伊武雅刀（猛の父 早川勇役）、
新井浩文（山梨県丸河市のガソリンスタンド店員 岡島洋平役）、
真木よう子（山梨県丸河市のガソリンスタンド店員 川端智恵子役）、
蟹江敬三（勇の兄弟で弁護士の早川修役）、
木村祐一（丸尾明人検察官役）、
ピエール瀧（船木警部補役）、
田口トモロヲ（裁判官役）、
田山涼成、
河原さぶ、
キタキマユ
【上映時間】１時間５９分
２００６年作品
【公式サイト】http://www.yureru.com/
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