茶臼山は長野県の千曲川左岸（犀川右岸）にある標高730.0mの山で、以前は北峰と南峰があったのが、大正時代に地滑りが発生し南峰がなくなったと言います。一方、妻女山は千曲川の右岸にある標高411mの尾根の張り出しにあるような場所です。映画の中でも絵地図による説明がありました。
小室哲哉が音楽監督と聞いても、どこが彼らしいところなのかわかりませんでしたが、エンドクレジットとともに流れるサンスクリット語（梵語）混じりの音楽は唯一新鮮に感じました。
後半の見どころはなんと言っても川中島、八幡原の戦いでしょう。霧がはれて両軍が対陣し、戦いが始まります。武田菱の旗の甲斐武田は赤、「毘」の旗の越後上杉は黒に統一されたコスチュームで、見た目の美しさもあります。スケールの大きさもカナダロケならでは、といった感じです。三千人のエキストラを使ったと言います。背後の山も日本離れした山ですが雄大です。できればスクリーンの大きな映画館で観たかった。特別篇では、合戦シーンがロングバージョンとなり、流れがよくわかるようです。
文庫本で新田次郎原作の『武田信玄』を読んでいたので、人物などをある程度把握できていました。ただ、本では川中島の戦いは武田の勝ち、映画では上杉の勝ちといった見方になっています。残念ながら海音寺潮五郎の原作本は読んでいませんが、新田次郎の本と、どこが違っているのか、興味深いところではあります。
山の景色は、ちらほらと出てきますが、富士山以外はどこの山かよくわかりませんでした。レンゲツツジの野で晴信（信玄）と側室の八重が馬を走らせ、その後、夕映えの富士山が映ります。「富士の向こうには駿河の海が広がっているのだ」と晴信が八重に言うシーンがありました。また、エンドクレジットの背景にも冠雪の富士山が映っていました。また、蔵王の樹氷のような景色が映っていたシーンがありました。
ロケは、前述のカナダの他に、兵庫県の竹田城跡でも行われたようです。約三億円をかけて天守閣や塀などを造ったそうです。その後、『魔界転生』でもこの地はロケに使われたそうです。
武田信玄役の津川雅彦は堂々たるもので、一方の上杉謙信役が榎木孝明というのはちょっと役不足なのではないかと思えるのは、元々、渡辺謙が演じる予定だったからで納得。カナダロケ中に急性骨髄性白血病で降板していたのでした。渡辺謙の謙信だったらどんなだったろうと想像してしまいました。
評価：６８点
【監督】角川春樹
【脚本】鎌田敏夫、吉原勲、角川春樹
【製作】角川春樹、大橋渡
【原作】海音寺潮五郎『天と地と』（角川文庫版）
【撮影】前田米造
【音楽プロデューサー】石川光
【音楽監督】小室哲哉
【主題歌】『天と地と 〜HEAVEN AND EARTH〜』 歌：小室哲哉
【ナレーション】西村知道
【出演】
榎木孝明（越後守護代 長尾景虎 のちの上杉謙信役）、
津川雅彦（甲斐守護職 武田大膳大夫晴信 のちの武田信玄役）、
夏八木勲（なつやぎ いさお）（晴信の軍師 山本勘介晴幸役）、
渡瀬恒彦（上杉方の重臣だったが謙信と一騎打ちすることになる琵琶島城主 宇佐美駿河守定行役）、
浅野温子（宇佐美定行の娘 乃美（なみ）役）、
財前直見（晴信の側室で女武者大将であり川中島の戦いで景虎に銃殺される八重役）、
伊武雅刀（いぶ まさとう）（長尾家の家臣だったが反旗を翻し武田についた昭田城主 昭田常陸介（しょうだひたちのすけ）秀忠役）、
成瀬正孝（上杉方だったが謀反を起こす箕冠城主 大熊備前守朝秀役）、
貞永敏（さだなが さとし）（長尾家馬廻りで昭田常陸介に斬殺される 秋山源蔵役）、
伊藤敏八（いとう としや）（２回の川中島の戦いで大活躍する上杉方の柿崎城主 柿崎和泉守景家役）、
浜田晃（はまだ あきら）（上杉方 与板城主 直江大和守実綱役）、
風間杜夫（後奈良天皇勅使役）、
大林丈史（おおばやし たけし）（奥信濃葛尾城主 村上周防守義清役）、
野村宏伸（川中島の戦いで右翼を担う晴信嫡男 武田太郎義信役）、
石田太郎（親族衆侍大将 武田典厩信繁役）、
大滝秀治（鉄砲商人 橘屋又三郎役）、
沖田浩之（武田方妻女山攻撃別働隊 高坂弾正役）、
山田明郷（武田方 初狩野源五郎（はじかのげんごろう）役）、
矢山治（上杉方 平林城主 色部修理亮勝長役）、
戸塚孝（武田方妻女山攻撃別働隊 馬場信春役）、
風祭ゆき（人質になり斬殺される昭田常陸介の妻役）、
室田日出男（飯富虎昌役）、
南雲勇助（北条高広役）、
長沢遼（諸角豊後守役）、
中井啓輔（初老の武士役）、
岸田今日子（侍女役）、
須藤正裕（鬼小島弥太郎役）、
野崎海太郎（のざき うみたろう）（奈弥辰蔵役）、
友居達彦（ともい たつひこ）（曽根平兵衛役）、
五島拓弥（ごとう たくや）（戸倉与八郎役）
【製作】角川春樹事務所
【配給】東映
【上映時間】１時間５８分
１９９０年作品
amazon.co.jp↓
映画「天と地と」(DVD)
海音寺潮五郎「天と地と」（書籍）
小室哲哉「天と地と」(CD)