「小鹿」が出てくるまでにはかなり時間がかかります。そしてその出会いは決していい出来事ではありません。それでも、小鹿はやはりかわいらしい。そして鹿も成長し、さらに悲劇を経て、少年が成長します。
以下ネタバレ注意！
父（グレゴリー・ペック）が毒蛇に咬まれ、その応急処置として通りかかった鹿を撃ち殺し、息子（クロード・ジャーマン・Ｊｒ）に内臓を取り出させ、患部に当てます。すると、近くから子鹿が出てきます。残された子鹿がかわいそうと、息子がペットにして飼いたいと言い、両親は許します。ちなみに原題の、"THE YEARLING" とは、生まれたての１年経っていない動物に対して使われる言葉のようです。
しかし、成長した鹿は作物を食い荒らしてしまいます。父は息子に森へ鹿を連れて行き、撃ち殺すように言います。しかし息子はそれができず、森で放すことしかできませんでした。案の定、鹿は戻って畑を荒らします。息子は柵を高くするなどしますが、それでも飛び越えて食い荒らしはおさまりません。
そしてついに、母（ジェーン・ワイマン）が銃で鹿を撃ちます。しかし、傷を負わせるにとどまります。父は息子にとどめをさすように言い、息子は従います。そのまま森へ彷徨し、三日間さまよい、家に戻ります。
このように題名からは想像できないような、現実をつきつけるような内容なのです。単にかわいい動物が登場するだけとか、動物愛護などという綺麗事ではないところが、この映画のいいところでしょう。
原作者はピューリッツァ賞を受けたマージョリー・キーナン・ローリングスです。ピューリッツァ賞というと報道写真が有名ですが、文学に対しても与えられる賞なのです。
妻オリー役のジェーン・ワイマンは、レーガン元大統領の元妻です。撮影当時は妻でしたが、その後、少しして離婚しているようです。賢そうな女優さんに見えますが、映画の中では気難しい妻役を演じていて、そのせいか、実生活でも夫婦仲があまりうまくいってなかったんじゃないかと邪推してしまいます。
主演のグレゴリー・ペックは、『キリマンジャロの雪』などでも主演していますが、代表作は『ローマの休日』でしょうか。『子鹿物語』では、１９４６年アカデミー賞主演男優賞の受賞は逃していますが、ゴールデン･グローブ賞男優賞を受賞しています。
１９４６年アカデミー賞では、撮影賞（カラー）を受賞しています。やはり動物や自然の撮影が評価されたのでしょうか。ロケ地は舞台のフロリダ州だけでなく、カリフォルニア州南部ビッグ・ベア・レイクなどでも撮影されているようです。
邦題には『仔鹿物語』という文字も使用されているようです。
評価：６３点
【監督】Clarence Brown クラレンス・ブラウン
【脚本】Paul Osborn ポール・オズボーン
【原作】Marjorie Kinnan Rawlings マージョリー・キーナン・ローリングス
【撮影】
Charles Rosher チャールズ・ロッシャー、
Leonard Smith レナード・スミス、
Arthur Arling アーサー・アーリング
【音楽】Herbert Stothart ハーバート・ストサート
【出演】
Gregory Peck グレゴリー・ペック（エズリー・ペニー役）、
Claude Jarman,Jr. クロード・ジャーマン・Ｊｒ（エズリーの息子 Jody ジョディ役）、
Jane Wyman ジェーン・ワイマン（エズリーの妻オリー Orry Baxter役）、
Chill Wills チル・ウィルス（Buck Forrester役）、
Clem Bevans クレム・ビヴァンス（Pa Forrester役）、
Margaret Wycherly マーガレット・ワイチャーリイ（Ma Forrester役）、
Henry Travers ヘンリー・トラヴァース（Mr. Boyles役）、
Forrest Tucker フォレスト・タッカー（Lem Forrester役）、
June Lockhart ジューン・ロックハート（Twink Weatherby役）
【製作国】アメリカ
【上映時間】２時間８分
【原題】THE YEARLING
１９４６年作品
