やわらかい生活

 鎌田の粋がない町の雰囲気が気に入り、そこで生活するようになった躁鬱病の橘優子(寺島しのぶ)。彼女に関わる男性が数人。性癖のある男性(田口トモロヲ)、早稲田時代の同僚である都議選候補者(松岡俊介)、いとこの男(豊川悦司)、ネットで知り合ったヤクザ(妻夫木聡)。ストーリー自体は何気ない普段の生活を描いているようにも見えますが、この映画は、出会いではなく、いくつもの別れを描いているのではないでしょうか。出会うことはできて、また魅力的で男をひきつけることもできる女性が、なぜか別れが多い。そんな運命にある女性を描いているような気がします。

 銭湯「福の湯」の女風呂のシーンで、壁に描かれているのは、定番の富士山。緑の前景と雲海の上の富士山が描かれています。河口湖方面から見た富士山だと思いますが、実際の富士山より若干鋭角気味なのと、実際には目立たない稜線がしっかり描かれているようです。

 監督は『ヴァイブレータ VIBRATOR』などの廣木隆一。寺島しのぶ、大森南朋、田口トモロヲは『ヴァイブレータ VIBRATOR』の出演者でもあります。そして、寺島しのぶの魅力が十分出ているのは『やわらかい生活』も同じです。

 もちろん豊川悦司もベテラン俳優として存在感と安定感があります。そして、ヤクザ役の妻夫木聡も違和感なく見ることができました。

 1カットの長いカメラワークも印象的で、変化の乏しいようなシーンでも惹きこまれて見ることができます。

評価:63点

【監督】廣木隆一(ひろき りゅういち)
【原作】絲山秋子(いとやま あきこ) 『イッツ・オンリー・トーク』(文藝春秋刊)
【脚本】荒井晴彦(あらい はるひこ)
【撮影】鈴木一博(すずき かずひろ)
【音楽】nido
【出演】
 寺島しのぶ(てらじま しのぶ)(橘優子役)、
 豊川悦司(とよかわ えつし)(優子のいとこ 橘祥一役)、
 松岡俊介(都議選に立候補している本間役)、
 田口トモロヲ(痴漢Kさん役)、
 妻夫木聡(つまぶき さとし)(若いヤクザ役)、
 大森南朋(おおもり なお)(バッハ役)、
 柄本明(橘昭夫役)

【上映時間】2時間6分
2005年作品
【製作】「やわらかい生活」製作委員会
 ハピネット・ピクチャーズ、衛星劇場、住友商事、スカパー・ウェルシンク、ステューディオ スリー
【配給】松竹

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