ダイアナ妃と王室との不仲は以前からあり、そしてダイアナ元妃死亡後も、既に皇太子とは離婚して王室の人間ではないからと、冷たい対応をし、それを国民が批判し、そしてようやく一週間ほどしてから、声明を出すことにより、王室の国民からの非難を鎮めることができたという、この期間にスポットを当てています。そして、あとは２ヵ月後の１シーンがあるのみ。
しかし、この短い期間を描いているだけなのに、これだけでも十分エリザベス女王を語っていると思えるのです。そしてエリザベス女王の苦悩と人間性がしっかり描けています。普通に考えれば、対応が遅れ、ようやく一週間後に声明を出すなど、何もいい点がないのに、それでもエリザベス女王に対してマイナスイメージにならないどころかプラスイメージさえ持ってしまうのが不思議ですが、きっとそれは、彼女の人間的な弱さを含めた人間らしさがしっかり描かれているからでしょう。
そしてエリザベス女王について、驚いたのは、鹿狩りをするための自然豊かな領地で、女王みずからが一人で車を運転し、荒れた道を走り、川を横断するシーンです。彼女のタフさ、自然に親しんでいる姿が新鮮で印象に残りました。歩くのも好きで、ブレア首相を「歩き」に誘うシーンもありました。
話はちょっと違いますが、以前、私が八ヶ岳に登ったときに、たまたま当時の浩宮様に会い、挨拶程度ながら、きさくに話しかけられ、とてもいい人柄だと感じたことがありました。決して皇室贔屓ではありませんが、浩宮様はとてもいい人だと思ったのは間違いありません。この映画でもエリザベス女王に親近感を持った人は多いでしょう。皇室や王室がどうこうという話は別にしても、その人自身を何らかの形で知ることで、それまでのイメージとは違った見方ができるのは決して悪いことではないでしょう。
エリザベス女王を演じたヘレン・ミレンは、２００６年アカデミー賞主演女優賞を受賞しました。
評価：７２点
【監督】Stephen Frears スティーヴン・フリアーズ
【脚本】Peter Morgan ピーター・モーガン
【撮影】Affonso Beato アフォンソ・ビアト
【音楽】Alexandre Desplat アレクサンドル・デプラ
（『スズメバチ』などの音楽も担当しています。）
【出演】
Helen Mirren ヘレン・ミレン（エリザベス女王役）、
Michael Sheen マイケル・シーン（トニー・ブレア役）（『ブラッド・ダイヤモンド』などにも出演しています。）、
James Cromwell ジェームズ・クロムウェル（フィリップ殿下役）（『ヒマラヤ杉に降る雪』などにも出演しています。）、
Sylvia Syms シルヴィア・シムズ（クィーン・マザー（皇太后）役）、
Alex Jennings アレックス・ジェニングス（チャールズ皇太子役）、
Helen McCrory ヘレン・マックロリー（シェリー・ブレア役）、
Roger Allam ロジャー・アラム（サー・ロビン・ジャンヴリン役）、
Tim McMullan ティム・マクマラン（スティーヴン・ランポート役）
【上映時間】１時間４４分
【製作国】イギリス、フランス、イタリア
【原題】THE QUEEN
２００６年作品
【公式サイト】
http://queen-movie.jp/
http://video.movies.go.com/thequeen/
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