全体的に暗く静かな雰囲気がただよっています。それは、寒い地方の冬で、雪が覆いかぶさっているからでしょうか。音楽もそれに追い討ちをかけるように沈んでいます。それは暗い歴史をイメージするのにぴったりなのかもしれません。映画を鑑賞する上では、ちょっとしんどい気もしますが。
ただ画面は暗めですが、美しい景色が映されていることは確かです。１９９９年アカデミー賞撮影賞にノミネートもされました。
原作は有名らしいですが、映画にするなら、もう少し脚本の質を高めてほしかったと思いました。またそれができそうなストーリーだったと思います。
舞台はワシントン州にある漁師たちの島。冬は雪の降り積もる寒い土地。雪のある広大な山を背景に剣道をするシーンもあります。そして針葉樹の森があります。
ロケは、アメリカ合衆国のワシントン州や、カナダのブリティッシュ・コロンビア州などとなっています。
３人の俳優はそれぞれ独特の存在感があり良かったと思いました。優しい性格の白人をイーサン・ホーク、その恋愛相手の日系アメリカ人を工藤夕貴、彼女の結婚相手となる日系アメリカ人をリック・ユーンが演じています。工藤夕貴は『SAYURI』でも助演として好演していたと思いますが、本作品が今のところ代表作と言えるのではないでしょうか。リック・ユーンは『００７／ダイ・アナザー・デイ』での悪役ザオが印象的でした。本作品でも独特の雰囲気を出していると思います。３人に限らず、他の脇役もはまっていたと思います。これは配役が良かったのか、演出が良かったかのどちらかでしょう。ただ、ハツエ・ミヤモト（工藤夕貴）の少女時代を鈴木杏が演じていましたが、これはちょっと違和感がありました。あまり似ていないからです。アメリカ人から見たら、違和感はないのかもしれませんが。
ヒマラヤスギの英名は、"Himalayan cedar" などで、学名は、"Cedrus deodara" です。学名の "Cedrus" はヒマラヤスギ属をあらわします。日本でもヒマラヤスギのことをヒマラヤシーダとも呼んでいるようです。ヒマラヤスギはヒマラヤからアフガニスタンに自生する針葉樹ですが、日本でも学校の校庭などで見かけたりします。ただ、この映画の舞台はアメリカ西北部。そこにヒマラヤスギそのものはないでしょう。ここではヒマラヤスギ属の樹木を指しているのでしょうか。しかしヒマラヤスギ属も北アフリカ・西アジア･ヒマラヤに分布が限られているようなので、そうでもなさそうです。アメリカで、"Cedar" は単純にスギの仲間をあらわしているのでしょう。ということは、この映画の邦題は学名に忠実になっている感じになっていて、そういう意味ではヒマラヤスギになるのでしょうが、実際には学名の "Cedrus" と、英名の "Cedar" は違うものを指しているようなので、そういう意味では誤訳になっていると思われます。なおヒマラヤスギ属はスギ科ではなくマツ科に属します。
評価：４８点
【監督】Scott Hicks スコット・ヒックス
【脚本】Ronald Bass ロン・バス、Scott Hicks スコット・ヒックス
【原作】David Guterson デヴィッド・グターソン 『殺人容疑』
【撮影】Robert Richardson ロバート・リチャードソン
【音楽】James Newton Howard ジェームズ・ニュートン・ハワード
【出演】
Ethan Hawke イーサン・ホーク（記者 Ishmael Chambers イシュマエル・チェンバーズ役）、
工藤夕貴（くどう ゆうき）（ハツエ・ミヤモト（旧姓イマダ）役）、
Rick Yune リック・ユーン（ハツエの夫 カズオ・ミヤモト役）、
Max von Sydow マックス・フォン・シドー（Nels Gudmundsson ネルス・ガドマンドソン老弁護士役）、
James Rebhorn ジェームズ・レブホーン（Alvin Hooks フックス検事役）、
James Cromwell ジェームズ・クロムウェル（Fielding フィールディング判事役）、
鈴木杏（すずき あん）（ハツエ・イマダ（少女時代）役）、
Reeve Carney リーヴ・カーニー（Ishmael Chambers イシュマエル・チェンバーズ（少年時代）役）、
Sam Shepard サム・シェパード（アーサー・チェンバーズ役）、
Celia Weston セリア・ウェストン（Etta Heine役）、
Cary-Hiroyuki Tagawa ケイリー＝ヒロユキ・タガワ、
Zeljko Ivanek ジェリコ・イヴァネク
【製作国】アメリカ
【上映時間】２時間８分
【原題】Snow Falling on Cedars
１９９９年作品
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「ヒマラヤ杉に降る雪」(DVD)
「ヒマラヤ杉に降る雪」（サントラ）
「殺人容疑」（原作本）
