山の上に住むおじいさんのところに、孫娘のハイジを預けに叔母と二人で山に登っていきます。喉が渇き、水をもらうために寄った途中の小屋にはペーターが住んでいます。1974年放映のテレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」で見た明るい山岳風景に比べると、暗い感じです。青空ではないのです。それに、地面は緑の絨毯という感じではなく、秋なので、枯れ草も混じっています。アニメの世界とリアルな映像との違いを感じます。ただ、全体的な雰囲気はアニメのハイジとかなり似ているのを感じます。ひょっとして、アニメを見て、その雰囲気に合わせてこの映画を作ったのでしょうか。そう思えてなりません。もっとも原作は、1880年に発表されたものです。その後、何度も映画化されたりしています。それらを見ていないので、客観的には何も言えませんが。それでも、原作と違って、宗教色が薄いところは、テレビアニメと共通することのようです（原作は未読です）。
アルムおじいさんは、預かるのを断って小屋の中に入ってしまいますが、叔母はハイジを置いてフランクフルトに帰ってしまいます。おじいさんは、仕方なくハイジに食事を与えます。
どこに寝てもいい、と言われ、ハイジは２階の屋根裏に登ります。窓からは青空にそびえるアルプスの峰が見えます。干し草があり、ハイジはうきうきし、ここで寝ると言います。寒いからといって、上に羽織るものをハイジに渡します。おじいさんは意外と親切です。
翌朝は雲海の風景が写されます。窓から朝日が照らします。ペーターがヤギをつれて訪れます。ハイジはおじいさんから弁当を持たされ、ペーターと一緒に放牧地へ向かいます。ヤギは草花を食べます。こういうのも見ると複雑な気持ちになります。日本でも、美ヶ原などの放牧地を訪れると、草花が食べつくされて、ほとんど花が咲いていないのです。そのあまりにも殺風景な草原を見ると、放牧はやめてほしい、という気持ちになってしまいます。
あまり弁当を持っていないペーターに、ハイジは自分の分も分けてあげます。ぶっきらぼうだったペーターも素直にありがとう、とお礼を言い、打ち解けていきます。山肌がアーベントロートに染まり、放牧から戻ります。
冬が訪れます。ペーターの家に行き、おばあさんと会うのは延期です。雪が凍るクリスマス過ぎまで待つことになります。そしてクリスマスを過ぎ、おじいさんはハイジにそりをプレゼントします。そして二人でペーターのおばあさんを訪ねにいきます。
春が来て、叔母さんが小屋に訪ねてきます。目的は、足の不自由なクララの遊び相手として、ハイジを紹介し、儲けようとする魂胆です。おじいさんは一旦は断りますが、せめよられ、しぶしぶあきらめます。叔母さんはハイジを連れ、山を下ります。
ドイツのフランクフルトでの生活が始まりますが、ホームシックにかかってしまいます。そしてクララと別れ、山に戻ります。しばらくしてクララが訪れ、車椅子のクララが歩けるようになる名シーンは映画の中ではあっけなく訪れるのが物足りなさを感じますが、問題ありません。他のシーンもそうですが、以前に見たアニメ番組の長尺さと比べれば、映画なんてオムニバスみたいなもの。でも、子供の頃にテレビアニメを見ているので、行間は頭の中で処理できます。初めてハイジと接する人にとっては、映画を見てどう感じるかはわかりませんが、少なくとも、テレビのハイジを知っていれば、この映画も間違いなく楽しめると思います。
ロケはスロヴェニアなどで行われたようです。
評価：７５点
【監督】Paul Marcus ポール・マーカス
【原作】Johanna Spyri ヨハンナ・スピリ
【脚本】Brian Finch ブライアン・フィンチ
【撮影】Peter Sinclair ピーター・シンクレア
【音楽】Jocelyn Pook ジョスリン・プーク （『アイズ ワイド シャット』などの音楽もしています）
【出演】
Emma Bolger エマ・ボルジャー（ハイジ役）、
Max Von Sydow マックス・フォン・シドー（アルムおじいさん役） （『ヒマラヤ杉に降る雪』などにも出演しています）、
Geraldine Chaplin ジェラルディン・チャップリン（ロッテンマイヤー夫人役） （チャールズ・チャップリンの娘です）、
Jessica Claridge ジェシカ・クラリッジ（クララ役）、
Sam Friend サム・フレンド（ペーター役）、
Diana Rigg ダイアナ・リグ（ゼーゼマン夫人役）、
Pauline McLynn ポーリン・マクリン（デーテ叔母さん役）
【上映時間】１時間４４分
【製作国】イギリス
【製作年】2005年
【原題】Heidi
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