YAMAKASI ヤマカシ

 「ヤマカシ」という変な、ちょっと日本語っぽい題名はコンゴ(旧ザイール)のリンガラ語で「超人」という意味だそうです。このグループは、友情・誠実さ・勇気に価値観を持ち、強い精神に基づいた強い肉体を持つことが目的だという、実在のグループなのです。

 確保なしでビルを登るシーンがありますが、撮影ではロープ付きです。でもその他いろいろなアクロバチックなパフォーマンスはワイヤーなしでやっているようです。スタッフもハーネスを付けての撮影です。『キャラバン』でもそうでしたが、フランス人には慣れたことなのでしょう。
 また、作り方も同じところがあります。『キャラバン』は現地の人を出演させて現地の生活を描いています。『ヤマカシ』も実在する「ヤマカシ」というグループの人たちが出演して映画になっています。
 この映画は『TAXi2』で「ヤマカシ」を出演させたのが縁で企画されたものだそうです。
『TAXi2』では、日本のヤクザの手下を忍者風に演じていたと思います。でもやはりカーアクションなどに比べて、人のアクションは地味に感じてしまいます。そこで、「ヤマカシ」という人のアクションを中心においた映画を作りたいと思ったのかもしれません。
 ヤマカシの7人を、日本の『七人の侍』、アメリカの『荒野の七人』と対比していたりします。

 不必要な動作があったり、計算しているとは思えない動作があり、わざとらしく、リアルさに欠けるのは残念。 でもビルを登るシーンを見たら、フリークライマーならうずうずしてくるのではないでしょうか。ただし、登りやすい造りのビルだから、それほど誘惑されないかもしれませんが。

 ビルに登るのが悪いか悪くないか、という話が出てきます。
登っている本人は、「人には迷惑をかけていない」といい、警察の友人からは、「子供が真似して落ちたら大変だ」という。よく、「ルールだから」などと言う人がいるが、これは本質を考えない言い逃れの言葉に過ぎない。その点、前の二つはどちらも理論的である。欧米人はやはり理論的に話をする教育が徹底しているのだろうか。
 もっとも、「ルール」とは社会生活を円滑にするために必要なものではある。でも、そのルールは必ずしも正しいとは限らないのです。こういう場合のルールとは、結局のところ、人に迷惑をかけない、ということが基本のように思います。
 例えば、「信号無視」を考えてみる。信号を守るのは交通を円滑にするためです。
よって他に車がいなければ信号無視しても何ら問題はないはずである。ただ、分別のついていない子供が見ていたら、「信号無視はしてもいいこと」と単純な誤解をするかもしれない。だから子供がいたらいくら安全でも信号無視をしてははいけない。例えば横断歩道を渡るときに信号無視するときでも、子供の前ではやらない。子供がいないと思っても見えていないだけであることもあるから、なるべく信号無視はしない方がよい、とは言えるかもしれない。
 一方、朝の4時に、田舎の道路で赤信号だったら車でも信号無視をする。じっと待っている車を見たりすると何を考えているのだろうと思ってしまう。自分で判断ができない人間なのか。誰かに判断してもらわないと何もできないのか、と。自分に自信がないのだろうか。他人任せの人生を歩んでいるのだろうか、とも。
 でも最近は信号の整備も行き届いてきて、交通量の少ないときは、点滅信号になっていることが 多い。つまり、それまではルールの方が間違っていた、ということになる。
 制限速度にしてもそうである。何年か前に制限速度の一斉見直しがあった。これもルールの誤りを認めたようなものである。だから、「ルールだから」なんてのは何の基準にもならない。少しは自分で考えなさい、と言いたい。こういう人は戦争になれば、何も考えずに人を殺せる人なのだろう、とも思ったりする。

 話を映画に戻す。ヤマカシは、自分たちの真似をして怪我をした子供の命を救うために心臓移植の費用を調達しようとする。しかし、そんな当てもなく、結局泥棒をすることを決める。そして見事成し遂げてハッピーエンドなのだが、これは微妙である。やっていることは泥棒であり、それがたとえ命を救うためとはいえ、泥棒は泥棒である。ただ泥棒に入るのは医療関係の理事である金持ち宅なので、ぎりぎりセーフなのかな。権力に歯向かうのは痛快ですしね。

 「ヤマカシ」のメンバーはバラエティに富んでいる。フランスのかつての植民地の人種をはじめとしてイタリア人とのハーフなど、7人の中に生粋のフランス人はいない。これもフランスらしい。

評価:69点

【監督】Ariel Zeitoun アリエル・ゼトゥン
【製作】Luc Besson リュック・ベッソン
【脚本】
 Luc Besson リュック・ベッソン、
 Julien Seri ジュリアン・セリ、
 Philippe Lyon フィリップ・リヨン
【出演】
YAMAKASI
 チョウ・ベル・ディン(BASEBALL エース役) イチローに似ている。ベトナム生まれ。
 Williams Belle ウィリアムス・ベル(スパイダー役) ベトナム生まれ。ロープを携帯
 Malik Diouf マリク・ディウフ(LE BELETTE イタチ役) セネガル人
 Yann Hnautra ヤン・ノウトゥラ(ZIKMU ジクミュ役) 音楽好きのカレドニア人(ミュージックの逆がジクミュ)
 Guylain N'Guba Boyeke ギレン・ヌグバ・ボイェケ(ROCKET ロケット役) 速足のコンゴ(旧ザイール)人
 Laurent Piemontesi ロラン・ピエモンテージ(TANGO タンゴ役) フランス人とイタリア人のハーフのダンサー
 Charles Perriere シャルル・ペリエール(SITTING BULL ブル役) 中央アフリカ人のリーダー
Maher Kammoun マエル・カモウン(ヴァンサン役)、
ブリュノ・フランデル(ミシュラン役)、
アフィダ・ターリ(ファティマ役)
【製作国】フランス
【上映時間】1時間31分
2001年作品

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