主人公のピアニストは一生を海の上で過ごすのだが、一人の客がそのピアニストに話す。
高い丘に登り生まれて初めて広大な海を見た、と。その感動が人生のターニングポイントとなったという。
一方、ピアニストも一度は陸に上がることを考える。陸から海を見てみたいと。
しかし、結局、海の上を選ぶ。
私自身、生まれて初めて見た海の記憶はありませんが、山から見た海はいくらかあります。
自宅近くの宮路山から見る三河湾はいつも穏やかで山頂で昼寝をしたくなります。富士山からは太平洋が見えました。印象的だったのは、九州最高峰屋久島の宮之浦岳から見た３６０°の海です。島の山というのもいいものです。北海道利尻島の利尻山では残念ながら雨で展望は得られませんでした。
海も山も自然の一部ということでは同じですものね。ひかれても不思議ではありません。
『ニュー・シネマ・パラダイス』の監督なので、そんなに期待していなかったのだが、雰囲気は共通のものがあるものの、こちらの方が洗練されていると感じた。
元々一生を船の中で過ごすという設定や、その中で天才的なピアニストになるという、あまりにも現実離れしている話なのに、なぜかぐっとひきつけられるのは、どこかに現実的な人間臭さが表現されているからだろうか。
ティム・ロスの演技も光っていた。
私自身、子供の頃、６年間ピアノを習っていたので、より楽しめたということはあるかもしれません。
何といってもピアノ演奏シーンはふんだんにありますから。
また、学生の頃、ほんの少しの間、ヨットに乗っていて、海にも親近感があるのかも。
他にも、北海道や九州の山に行くときに客船を利用しているので、その雰囲気がなかなかいいことも知っている。
客船を扱った映画が多いのも当然のことなのかもしれません。
ただ話はずっと船の上。波乱はあるものの限界があり、映像的に単調にならざるを得ないのは仕方がない。だから満点はあげられない。
もちろん音楽は素晴らしい。同じエンニオ・モリコーネが音楽を担当した『１９００年』という映画をこの映画の主人公の名前から連想してしまうが、関係ないよね。
評価：８９点
【監督・脚本】ジュゼッペ・トルナトーレ Giuseppe Tornatore
【原作】アレッサンドロ・バリッコ Alessandro Baricco
【撮影】ラヨシュ・コルタイ Lajos Koltai
【音楽】エンニオ・モリコーネ Ennio Morricone
【出演】
ティム・ロス Tim Roth（ナインティーン・ハンドレッド役）、
プルート・テイラー・ヴィンス Pruitt Taylor Vince（マックス役）、
メラニー・ティエリー Melanie Thierry（少女役）、
クラレンス・ウィリアムズ三世 Clarence Williams III（ジェリー・ロール・モートン役）
ビル・ナン Bill Nunn（ダニー・ブードマン役）
ピーター・ヴォーン Peter Vaughan（楽器店主役）
【製作国】米・伊合作
【上映時間】２時間５分
【原題】THE LEGEND OF 1900
１９９９年作品
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