密閉山脈 舞台は北アルプスの壁である。モデルは鹿島槍ヶ岳である。森村誠一がこんなクライミングの壁を舞台にした小説を書けることに驚いた。もちろん彼の小説には他に『未踏峰』という山岳小説もあることを知っている。しかし、クライミングを描いているのだ。それにへんてこでもない。もっとも私自身、鹿島槍の岩場などに行ったことはないので、詳しいことはわかりませんが。
もちろんこれは題名からも推測できるようにミステリー小説です。密室ならぬ密閉山脈なのです。男女関係が絡んだ殺人で、あまり気持ちのいいものではありませんが、本格的な山岳小説であり、かつミステリーもしっかりしている小説という意味では貴重な存在なのではないでしょうか。
さらに驚いたのは、ＴＶドラマになったこと。2005年3月12日、テレビ朝日系列で放映された土曜ワイド劇場。でもやはり岩場のシーンはあまりありませんでした。クライミングジムでの練習のシーンと、ハーケンを抜くシーン程度。また、舞台は北アルプスではなく谷川連峰神待岳（かまちだけ）になっていました。アウトドアものの代名詞のような田中律子は山岳雑誌会社の社員というぴったりの役をやっていました。ヒロイン役は小川範子、登山者役は柄沢次郎と川井康弘。警部補役は加藤剛でした。
【著者】森村誠一
（文庫本）