藤井樹（いつき）という絵の上手な山男とつき合っていた神戸に住む渡辺博子（中山美穂）。 彼を忘れられず、三回忌の帰り、彼の家で中学の卒業アルバムを見せてもらい、 名簿に藤井樹の名前を見つけ、小樽の住所をメモする。
今は国道になってしまって、そこに家はないという、その住所に手紙を出す。
ところが、返事が届く。
実は、同姓同名の女性がクラスメイトにいたのである。
今は当時の山仲間の秋葉茂（豊川悦司）とつき合っている渡辺博子。
死んだ藤井樹と小樽に住む藤井樹との関係と合わせ、３つの恋愛関係が絡み合っている。
涙が止まらない素晴らしい脚本を書き、監督をしたのは『スワロウテイル』でも監督・脚本をしている岩井俊二。 中山美穂が渡辺博子と藤井樹の二役をこなす。名優と呼びたい。 ＴＶドラマ『毎度お騒がせします』からの好きな女優でもありますが。 豊川悦司も難しい役をこなしている。中学生の頃の藤井樹を演じている酒井美紀もいい。
登山のシーンは全くない。遭難した山を「お山」と呼んでいた。 立山に雄山があるが、これではないだろう。雄山は普通「お」にアクセントをつけると思うが、 映画の中の「お山」は「お山の大将」というときのようにフラットな発音をしていた。 具体的な名称ではなく山の敬称という感じの使い方である。 終盤にその「お山」に秋葉茂と渡辺博子が二人で行くシーンがある。 麓までだが、その「お山」が映る。 左側に特徴的な尖がりが見えます。一瞬八ヶ岳かな、とも思ったのですが、山の形に見覚えがなく、 残念ながら特定できませんでした。 特徴的な山だから、知っている人はわかるのでしょう。 広い雪原から見える山ですから、北海道のどこかの山でしょうか？
後でweb検索してみると、なんと野辺山から見た八ヶ岳であることがわかりました。 なかなかわからないものですね。左のとんがりは赤岳南側の小天狗、大天狗でしょうか。 麦草峠から観音平まで縦走したときに、キレット小屋のテントサイトから写真におさめた ような気がします。
ちなみに、冒頭の雪原に中山美穂が横たわっているシーンは、小樽天狗山スキー場、
「お山」山麓の雪道は毛無山展望台付近だそうです。
（参考：http://www.small-happiness.com/jp/index_j.html）
さらに小ネタを１つ。中学の設定は１９８０年頃のようで、樹が死ぬときに歌っていたのが
松田聖子の『青い珊瑚礁』。そして、絵の好きな樹が答案用紙の裏に描いていたのは、ミノルタのカメラＸ７
のＣＭで水着姿になっていた宮崎美子。これは、１９８０〜８１年当時のＣＭを見ていた人なら
誰でも気づきます。エピソードはこれから。あのＣＭの「いまのキミはピカピカに光って」という
歌を歌っていたのは斉藤哲夫。これも知っている人は多い。作詞は糸井重里。これは知らなかったが、
それはまあおいておく。作曲が樹（男）の父役を演じていた鈴木慶一だそうである。
そんなからくりがあったとは。私もこの頃、中学生でした。
とにかく感動する恋愛映画でした。やはり私は恋愛映画に弱いのでしょうか。 あともう少しストーリーに抑揚があれば満点でした。 ちなみに洋画の恋愛映画では『カサブランカ』が好きです。
評価：９６点
【監督・脚本・編集】岩井俊二
【製作】村上光一
【撮影】篠田昇
【音楽】REMEDIOS
【出演】
中山美穂（渡辺博子、藤井樹役）、
豊川悦司（秋葉茂役）、
酒井美紀（女子中学生の藤井樹役）、
柏原崇（男子中学生の藤井樹役）、
篠原勝之（樹（女）の祖父役）、
范文雀（樹（女）の母役）、
加賀まりこ（樹（男）の母役）、
鈴木慶一（樹（男）の父役）、
鈴木蘭々（藤井樹の同級生及川早苗役）、
塩見三省（山仲間梶親父役）、
中村久美（浜口先生役）、
光石研、小栗香織、長田江身子、わたる哲平、田口トモロヲ、神戸浩、徳井優
【上映時間】１時間５７分
【製作】フジテレビジョン
１９９５年作品
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