天空の城ラピュタ 宮崎駿監督・原作・脚本、スタジオジブリ制作のアニメである。テレビでもう何度も見ている。ただ、無茶苦茶好きかと言われるとそうでもない。宮崎アニメでは、『となりのトトロ』、『もののけ姫』、『ルパン三世 カリオストロの城』が光っている。次に『魔女の宅急便』だろうか。その次ぐらいがこの『天空の城ラピュタ』である。『風の谷のナウシカ』も同じ程度である。ちなみに「ラピュタ」とは「ガリバー旅行記」第３部「ラピュータ国」から来ているそうです。映画の城ラピュタのモデルはイギリス・ウェールズのPowis Castle だそうです。その他いくつかのモデルが、監督が事前に訪れたウェールズのものだそうです。
さて、この『天空の城ラピュタ』。まず囚われているシータを空の海賊が奪うところから始まる。この慌しい始まり方は『ルパン三世 カリオストロの城』を思わせる。シータを助けるパズーとのコンビ、海賊、そして政府側と三つ巴の構図である。海賊と政府の狙いは、天空に浮かぶ伝説の城ラピュタの原動力である「飛行石」である。これがあれば世界を支配できると考える政府機関と、単に珍しい宝石を求める海賊と、ラピュタの王位継承者であるシータ。海賊とシータ、パズーは協力しあって政府機関に立ち向かう。
宮崎アニメは自然の描写がいい。この映画はそれほどでもないが、考えてみればキーポイントになっている。それは「岩石」と「木の根」である。パズーの住むスラッグ渓谷は岩塔が林立し、鉱物の採掘が昔から続いているのである。パズーもそこで見習い機械工として働いている。岩塔は南米のギアナ高地を思い浮かばせる。自然発光する「飛行石」も存在するが、石を割って酸素に触れるとその光は失われてしまう。その不思議な力をコントロールできるのがラピュタである。しかし力のあるものは悪用もできる危険なものである。ラピュタはその危険性もわかっていて、シータはその力を破滅させる呪文も知っているのである。
岩石にはいろいろな力があるのは何も映画の中だけではない。実際に石炭は燃料になるし、いろいろな金属も岩石である。また宝石になるものもある。さらに放射能を持っているものもある。話題になったトルマリンなどもそうである。新聞で読んだ中に、面白いものもあった。豊橋に住む社長が不思議な力を発見した「オーラ・ストーン」。正式には「ホルンブレンドカミングトン閃石ひん岩」というらしい。1990年夏、人手不足で社長自らが庭石の運搬をしてたとき、石材の上に胸ポケットのたばこを落としてしまった。しばらくしてそれに気づき、たばこを見ると、その異変に気づいた。葉が収縮して巻き紙がしわくちゃになっていたのだ。普通の人なら、単にしけったのか、程度にしか思わず見過ごすのだろうが、社長はその鉱石を分析してもらい、遠赤外線の高い放射が確認された。この放射線は人体に良いとされる波長で、抗菌、防臭、抗カビ性、保温性が高く、枕、布団、肌着、食品容器などに使われているそうである。用途は拡大し、電気マッサージ機や使い捨てカイロに取って代わるようになるかもしれない。
話を映画に戻す。もう一つのキーワード「木の根」。後半、舞台はラピュタに移る。そこは廃墟となっており、木が成長し、建物を覆いつくしている。こちらはさながらアンコールワットか。お花畑にはツリガネニンジンのような花やキンポウゲかケシを思わせる花も咲いている。鳥や小動物（キツネリス）も住んでいてヒタキの巣も出てくる。最後は人工物に自然がまさる、という解釈も成り立つ。パズーとシータは、木の根に助けられて死なずに済むのである。
宮崎駿といえば、飛行機である。夜明け前の空を飛んでいるときの風の音がまたいい。雲の中の高い山の上でテントで泊まっている雰囲気に通じる。ラピュタの雲の中に入ると雷雨である。稲妻が横に走る。なぜかタイムスリップしたような過去のパズーの父の姿が現れるのはよくわからなかったが。
パズーが建物を登るクライミングシーンもありました。評価：７５点
【監督・原作・脚本】宮崎駿
【製作】徳間康快
【プロデューサー】高畑勲
【音楽】久石譲
【挿入歌】「君をのせて」
【作詞】宮崎駿
【作曲】久石譲
【歌】井上杏美
【撮影】高橋プロダクション 高橋宏固
【出演（声）】
田中真弓（パズー役）、
横沢啓子（シータ役）、
初井言榮（女海賊ドーラ役）、
寺田農（ムスカ大佐役）、
常田富士男（鉱山地下のポムじい役）、
永井一郎（モウロ将軍役）、
糸博（パズーの親方ダッフィー鉱夫役）、
神山卓三（どーら一家長男シャルル役）、
槐柳二（タイガーモス号老技師役）、
ＴＡＲＡＫＯ（親方ダッフィーの愛娘マッジ役）、
鷲尾真知子、
安原義人、
亀山助清、
林原めぐみ
【上映時間】２時間４分
【製作】徳間書店
【配給】東映
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