納得できないまま、女の家に行ってみると、映画フィルムや写真などがいっぱいあります。女の書いた自伝のような日記（日記のような自伝？）を見つけて、読んでみると、その女が幼馴染だったことに気づきます。そして、その日記を読むのと同時進行で、子供の頃から何があったかを映像で追って再現してくれます。この回想の仕方はとても自然です。
映画には様々な要素が盛り込まれてもいます。家族愛、恋愛、中国の歴史、映画。そしてこれらが、精密機械のように寸分の狂いもなく、とても自然に結びついています。重箱の隅をつつくように、欠点をあげつらうことなど全くできません。逆に言えば、完全無欠過ぎて、毒が無いと言えるかもしれません。
題名からわかるように、この映画は、映画をモチーフにしています。だいたい、映画で映画を描くなんてのは、手前味噌的で好きではないのですが、この映画の中の映画の扱い方は、映画を描いているというよりは、映画を手段として描いているに過ぎません。それは、男と女を結びつける手段として、という意味が大きいでしょう。また、中国にも、アメリカや日本のような、映画の古き良き時代があったのだということを知ることもできました。
少女がちょっと悪そうな男に惚れるというような設定を見ると、何となく女性好みだな、と思ったら、やはり監督はシャオ・チャンという女性でした。
撮影監督はベテランとのことです。自然描写も多くあり、砂丘のような砂山や、緑の薄い岩山が映っていました。白樺でしょうか、黄葉も描かれています。また、夕景で黄色い光に包まれるシーンも多くあります。この景色の舞台は、寧夏（ニンシャ）という鉱山の町。そこで野外映画上映があった頃の話が続きます。
野外映画上映で、アルバニア映画「寧死不屈」（中国題）を上映するシーンがあります。その中の台詞で、「すぐに山に登ろう 勇者たちよ 春には遊撃隊に志願する」などという台詞もありました。また、「鉄道遊撃隊」という映画の中では、「西の太陽が山に沈む ひっそりと静まり返る微山湖」という歌詞の歌もありました。（以上、「山」絡み）
登場する女性も綺麗です。玲玲（大人役）もその母親も美人女優です。美しすぎて現実離れしているように感じてしまうほどですが、現実的過ぎるよりはいいでしょう。1972年生まれのシャオ・チャン監督もそこそこのルックスの持ち主です。
ラストは大きな感動が待っています。涙無くしては観られません。久しぶりに大泣きできる映画を観ました。
評価：９０点
【監督】小江 シャオ・チアン
【脚本】小江 シャオ・チアン、程青松 チェン・チンソン
【製作】黄建新 ホアン・チェンシン、爾冬陞 デレク・イー（イー・トンシン）
【撮影】楊輪 ヤン・ラン
【音楽】趙琳 チャオ・リン
【出演】
夏雨 シア・ユイ（毛大兵 マオ・ダービン役）、
姜易宏 チアン・イーホン（玲玲の母親役）、
グワン・シャオトン（玲玲少女役）、
李海濱 リー・ハイビン（潘大任 パン・ダーレン役）、
王正佳 ワン・チョンジア（毛小兵少年役）、
チー・チョンヤン（玲玲役）
【上映時間】１時間４０分
【製作国】中国
【原題】夢影童年 Electric Shadows
【公開】２００４年
