ダンテズ・ピーク いきなり火山の噴火から始まる。火山弾が町を襲う。そして火山弾が直撃して愛する人を失ったハリー。
４年後、火山の専門家として、ノーザンカスケードのダンテズ・ピークという７４００人ほどが住む町へ調査へ向かう。
噴火すると直感し、女性市長と共に緊急会議を開く。ところが、ハリーの上司が政治的に慎重で、避難指示を出す必要はないという。噴火するというデータが揃っていないからだという。ハリーはデータがないからいつ噴火してもおかしくない、と反論するが、結局上司の命令には従う。市長が女性だという設定は、誰か重要人物が女性でないと恋愛が絡まないから、映画的なのでしょう。火山の専門家の責任者が保守的であることも、パニック映画なのだから、みんな避難してしまったら映画にならないので、これも映画的に当然なのかもしれません。ただ、この政治的判断はありそうな気もします。
ラストは、まあ想像通り、噴火から逃げ出してハッピーエンド。
ストーリー的には想像の範囲内ですが、映像はリアルです。『ボルケーノ』でもリアルと感じましたが、アメリカは火山の研究も進んでいて、専門家による監修のようなことが行われているのでしょうか。セントヘレンズ山の噴火以来、よく研究されているのかもしれません。この映画もセントヘレンズ山噴火がモデルだと言います。セントヘレンズ山はアメリカ合衆国北西のワシントン州南西部カスケード山脈にある火山です。1980年5月18日に噴火。標高が400mほど低くなったといいます。そして、この映画のダンテズ・ピークも、ノーザンカスケードです。ちなみにこの映画のロケはセントヘレンズ山でも行われたようです。
火山の多い日本でこのような映画を私は知りませんが、アメリカと日本では何が違うのでしょう。映画になりにくい土壌があるのでしょうか。文化の差でしょうか。日本映画でそれらしいものと言えば、『ドラゴン・ヘッド』がありますが、これは火山の噴火という明確な設定はなかったと思います。ただ、『ダンテズ・ピーク』と同じような火山灰のようなものが舞っていました。それはふわふわした羽毛のようなものでした。実際、火山灰でそんなものが舞うのでしょうか？ 少なくとも、私の経験とは違います。
私の経験というのは、桜島の爆発です。桜島はしょっちゅう爆発しているので珍しくはありません。爆発しても誰もパニックになりません。普段は安定した爆発のようで、噴火口に近づかなければそんなに危険ではないからでしょう。しかし間近に見る火山の爆発の威力にはさすがに驚きます。
1986年3月、桜島西麓の公園の東屋の中にテントを設営していましたが、夕方、突然、爆発があり、軽石が降ってきました。そして火山灰も降りました。翌日は桜島の南岸を半周歩いて東へ向かいましたが、風下になっていたようで、ずっと火山灰を被りながら歩いていました。目、鼻、耳と穴の開いているところは黒い灰だらけになりました。車道も火山灰で車線などまったくわかりません。それでも車は走っています。こんなところで車に乗っていたら、火山灰の酸性で、あっという間に錆びてしまいそうです。しかし、映画のようなふわふわした羽毛のようなものは降っていませんでした。黒っぽい火山灰で霧のようになるだけでした。視覚的に霧じゃ画にならないから映画では羽毛みたいなのを舞わせているのでしょうか。
火山の映画を観て、臨場感を持って観られるかどうかは、経験によって大きく異なるでしょう。噴火などの経験があれば、リアルにそのときの様子が思い浮かぶことでしょう。そんな経験がない人にとっては単なるスクリーンの中だけの現実離れしたＳＦ映画みたいなものになってしまうかもしれません。ただ、噴火の経験が直接なくても、火山をいくつも見ていれば、ある程度の想像力は働くでしょう。富士山や阿蘇山の火口を見たり、御嶽や焼岳の水蒸気を見たりしていれば、火山とはどういうものかは多少理解できます。 ヘリが火口上空を飛ぶシーンでは九州の韓国岳の火口壁を思い出しました。火山の火口はどれも似ているのかもしれません。
さて日本では噴火の予知は現在どれぐらいのレベルで行われているのでしょう。富士山麓の変化（水蒸気の発生だったかな？）があったときには、その情報がマスコミにより流され、すぐに噴火に結びつくものではない、と発表され、落ちついたものでした。1979年10月28日早朝の御嶽の噴火のときは突然でした（実際には数年前から群発地震が発生していたが死火山とされていたこともあってか噴火とは結びつけられていませんでした）。三宅島など活火山ではそれなりに正確な予知ができているのでしょう。浅間山は火山活動のレベルに応じてどこまで登山できるかが決められていると思います。私はいまだ浅間山に出かけたことがありません。ちゃんと情報を把握して、いつかは登れるといいのですが。ちなみに、この映画のことは、『御嶽山 静かなる活火山』（2010年 信濃毎日新聞社）の中でも触れられていて、「噴火を扱った映画では秀作」と書かれています。御嶽山は2014年にも噴火し、多数の死者が出ましたが、この本はそれ以前に出版されたものです。
火山学者ハリー役のピアース・ブロスナンは００７シリーズでジェームズ・ボンドを演じているため、そのイメージで見てしまいますが、この映画でも格好いい役をやっていますから、ボンドのイメージでも観ることができてしまいました。リンダ・ハミルトンも美人市長らしく見えました。
評価：７1点
【監督】Roger Donaldson ロジャー・ドナルドソン
【脚本】Leslie Bohem レスリー・ボーエム
【撮影】Andrzej Bartkowiak アンジェイ・バートコウィアク
【音楽】John Frizzell ジョン・フリッゼル
【テーマ音楽】James Newton Howard ジェームズ・ニュートン・ハワード
【出演】
Pierce Brosnan ピアース・ブロスナン（Harry Dalton 火山学者ハリー役）、
Linda Hamilton リンダ・ハミルトン（Mayor Rachel Wando レイチェル町長役）、
Jamie Renee Smith ジェイミー・レネー・スミス（Lauren Wando役）、
Jeremy Foley ジェレミー・フォリイ（Graham Wando役）、
Elizabeth Hoffman エリザベス・ホフマン（Ruth役）、
Charles Hallahan チャールズ・ハラハン（Dr. Paul Dreyfus役）、
Grant Heslov グラント・ヘスロフ（Greg, USGS Crew役）、
ツィ・マー（Stan, USGS Crew役）
【製作国】アメリカ
【原題】DANTE'S PEAK
【上映時間】１時間４９分
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